製菓と洋菓子を二本柱とする不二家は1910年創業の老舗。長い歴史ゆえ、不二家の購入層といえばファミリーやシニア層という印象が強かった。だが、コロナ禍で巣ごもり消費が急増した中で、若年層の開拓にも成功しているという。どんな戦略を打ち出しているのか、河村宣行・社長(66)に訊いた。
──平成元年(1989年)当時は何をされていましたか。
河村:1989年当時は商品企画を担当していました。バブル真っ盛りの華やかな時代だけに消費者も移り気で、ライバル社と競うように新商品を投入していました。
そんな中、私も関わったスナックチョコの「アメリカンバー」(1988年発売)は、当時の大人気アイドルグループ・GENJIさんをテレビCMに起用したところ、飛ぶように売れましたね。
──その後、2007年に期限切れ原材料使用に端を発する一連の問題で不二家は窮地に陥ります。河村さんは当時、広報対応の責任者として批判の矢面に立ちました。
河村:前年の9月に製菓事業の営業部長から人事総務部長に異動していたのですが、当時は総務セクションの中に広報担当を1人置いている程度でした。ところが年明けの1月に問題が発覚すると取材が殺到し、広報経験が全くなかった私はメディア対応に苦労しましたね。
そのさなか、食品の安全・安心を確保するための技術的な仕組みを山崎製パンさんから提供していただきました。また、当社は一連の問題で資金的な面でも追い込まれていましたので資本面でも助けていただき、ヤマザキグループの一員となって今に至っています。
──今年、山崎製パンのテレビCMに登場している女優の酒井美紀さんを社外取締役に迎えました。
河村:昨年、当社のイメージキャラクターである「ペコちゃん」誕生70周年という節目にあたり、どなたかにアンバサダーを務めていただこうという話になり、(山崎製パン最高顧問の)山田(憲典)会長を通じてお願いし、ご快諾いただいたという経緯です。
酒井さんは世界の子供たちを支援する社会貢献活動に熱心ですが、我々も「ペコちゃん」を通じて保育園や児童施設を巡回する活動を続けています。ご多忙な中でも酒井さんには取締役会に毎回ご出席いただき、外部の方ならではの発想も頂戴しています。