都市部の子供ほど学歴が高い
冒頭の田中さんが懸念したとおり、特に地域間で格差が広がりやすいのが「教育」だ。『教育格差』(ちくま新書)の著書がある早稲田大学准教授の松岡亮二さんは、生まれ育った家庭と地域によって、子供の学力には一定の格差があると指摘する。
「親の学歴や収入、職業などを統合した指標を『出身家庭の社会経済的地位(SES)』と呼びます。SESが高い家庭の親は教育熱心で、子供の学力や学歴も高くなる傾向があります。SESが高い両親大卒家庭は東京など三大都市圏に多く居住しています。
一方、両親非大卒の家庭の割合が高い地方では都市部より地域の“教育熱”が低く、私立校や塾、習い事などの選択肢も少ない。そうした地域ではロールモデルになる大卒の大人や大学進学を目指す友人が少なく、学習・進学意欲が高まりづらいと考えられます。地方出身であると都市部の子供より学力や学歴達成という観点では不利な実態があります」(松岡さん)
昨今は有名予備校がオンライン授業を取り入れるなど、インターネットの発達によって日本のどこでも同様の教育が受けられる土壌が整いつつある。しかしいくらオンライン化が進んだとしても、それを使いこなして勉強するための原動力となる「意欲」を持てない状況では効果は期待できない。
「地域や家庭の環境によって学習や進学の意欲が高まっていない状態でオンラインのサービスだけ増えても、子供が学習を継続するのは難しいと考えられます。むしろ『機会があるのに勉強しないのは個人の問題』と不毛な自己責任論を強化することになりかねない。どの教育段階でも個人が可能性を最大限に追求できる条件を整備すること、また、いつでも学び直しが可能な生涯教育を拡充することが大切ではないでしょうか」(松岡さん)