大前研一「ビジネス新大陸」の歩き方

中国・習近平主席の統制強化策の行く末 不動産市場は“地獄の1丁目”に

習近平政権の統制強化策が向かう先は?(イラスト/井川泰年)

習近平政権の統制強化策が向かう先は?(イラスト/井川泰年)

 中国では、様々なかたちでの規制強化が続いている。これらの動きには、どのような狙いがあるのだろうか。習近平政権が繰り出す統制強化策とその行く末について、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。

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 中国共産党は11月11日の「第6回全体会議(6中全会)」で、結党100年を迎えた党の歴史を総括する「歴史決議」を採択した。中国でこれまでに同決議が採択されたのは毛沢東時代の1945年と鄧小平時代の1981年の2回だけであり、40年ぶりの決議採択によって習近平国家主席は「核心」としての地位を盤石とし、来年秋の党大会における異例の3期目続投を確実にして“終身統治(永久皇帝)”も視野に入れたと報じられている。

 だが、このところ習政権が矢継ぎ早に繰り出している統制強化策は、非常に近視眼的で了見が狭い“歴史に残る愚策”ばかりだ。

 一例は不動産規制である。過熱した不動産市場を抑制するため、夏頃から需要抑制策として住宅ローン総量規制や住宅購入規制を行ない、供給抑制策として不動産企業の資金調達条件を厳格化した。その結果、急速に不動産市場が冷え込んで不動産企業の信用不安が深刻化し、恒大集団や花様年、新力などが経営破綻の危機に直面している。日本も1990年以降、似たような総量規制や窓口規制を行なってバブル崩壊への道を辿ったが、いま中国は同じ轍を踏もうとしているのだ。

 あるいは、巨大IT企業に対する締め付け。たとえば、昨年11月に電子商取引大手アリババグループ傘下のフィンテック企業アント・フィナンシャル(現アントグループ)の新規株式公開(IPO)が中止に追い込まれた。同グループ創業者の馬雲(ジャック・マー)氏が中国の金融制度を批判したことに当局が激怒して介入したとされる。

 さらに、パソコン大手のレノボグループ(聯想集団)が今年10月、上海証券取引所のハイテク企業向け新市場「科創板」に中国預託証券(CDR)の上場を申請した後、すぐに撤回した。理由は明らかにされていないが、レノボ創業者の柳伝志氏はアリババの馬氏の支援者として知られ、柳氏の娘の柳青氏が総裁を務める配車アプリ大手の滴滴出行(ディディ)が6月にアメリカで上場した際は中国政府に「国家安全法」に基づいてスマホアプリのダウンロード停止などを命じられているから、今回もアントと同じく当局が介入したことは想像に難くない。

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