この秋、石油価格高騰でガソリンや灯油から、電気料金、小麦粉、食用油、パンといった食料品や牛丼などの外食まで値上げが相次いでいる。だが。この「令和のオイルショック」と呼ぶべき状況は、日本経済浮揚の絶好の機会なのだ。一つのメリットとして日本が世界から出遅れていた自然エネルギーへの転換投資が急速に進むことがあげられる。
政府は2050年までに温室効果ガスの排出をプラスマイナスゼロにするカーボンニュートラルを宣言したが、EU諸国に比べて太陽光、風力、バイオマス発電などクリーンエネルギーの普及が遅れている。産業界にはカーボンニュートラルの政府方針に抵抗が強い。
しかし、石油高騰で企業は否応なく対応を迫られている。それを後押しするのが政府の経済対策だ。金融論が専門の相澤幸悦・埼玉大学名誉教授が語る。
「世界ではガソリン車に代わってEV(電気自動車)が急速に普及しているが、日本はEV用の充電施設の整備もまだ遅れている。だが、日本人は苦境に立たされても目標と資金があれば団結して力を発揮できるし、新エネルギー開発の種となる技術は豊富にある」
令和のオイルショックで化石燃料から自然エネルギーへの転換という国家目標がはっきり定まった。加えて、それを実現するための巨額の資金も用意された。
「政府は今回の過去最大の経済対策でカーボンニュートラル推進に莫大な予算を割り当てた。政府が積極財政を行ない、政官民一体となって研究開発投資を増やして技術革新に尽力すれば、経済の武器となる新エネルギー技術の開発が一気に進むでしょう」(同前)
世界では企業の環境、社会、ガバナンスへの取り組みに注目して投資するESG投資資金が3000兆円に達するといわれる。日本企業が新エネルギー技術に力を入れれば、世界の投資資金を呼び込み、株価も上昇するはずだ。