国民にとってのメリットもある。自動車購入時の省エネ補助金はこれまで削減されてきたが、政府は一転して経済対策の補正予算案に「クリーンエネルギー自動車・インフラ導入促進補助金」の創設を盛り込んだ。
これはEVを購入した人に最大80万円の補助金を出すものだ。東京都独自のEV購入補助金(個人は45万円)を合わせると、1台125万円の補助をもらえる計算だ。
来年初めにも発売が予想されているEVの軽自動車には最大50万円(都と合わせて95万円)が補助され、プラグインハイブリッドも50万円出る。原油高でガソリン価格が上昇しているのを機に、EVの普及を一気に進めようという政策だ。
また、日本は世界から「何をやっても物価上昇できないデフレ国」とみられてきたが、石油高騰の中でそうした日本経済の“体質”はメリットに転じている。
世界では原油高騰でインフレが進み、今年10月の消費者物価は米国が6.2%上昇と31年ぶりの高い伸びを示し、ユーロ圏も4.1%と13年ぶりの高さだった。ブラジルなど南米諸国は2桁のハイパーインフレに苦しんでいる。
日本はガソリンや灯油、電気料金などの値上げラッシュは起きているものの、10月の消費者物価の上昇はわずか0.1%にすぎない。
超物価安定国の日本は昭和の時代と違ってオイルショックでも物価が上がらない「物価強国」だ。石油高騰の消費へのダメージは軽微で、世界がインフレに苦しんでいる中、日本は補助金拡充でモノを買い、消費を増やすチャンスといえる。