実際には、遺産のうち所有不動産が占める割合などによって、現金の贈与でどこまで圧縮できるかは変わるが、シンプルでわかりやすいやり方だ。
ところが、その前提が大きく変わろうとしている。与党の税制調査会などで議論が進み、来年度の税制改正で生前贈与による節税ができなくなる可能性があるのだ。前出・木下氏が説明する。
「相続税は累進課税で、課税遺産(法定相続分に応ずる取得金額)が1000万円以下なら税率10%ですが、1億円超~2億円以下なら40%、6億円超になると55%といった具合に、遺産が多いほど税率が上がっていきます。そのため、富裕層ほど大きな額の生前贈与をして節税している実態があり、国はそれを抑制したいと考えているのです」
どういった改正になるかは、まだはっきりとわかっていない。
「年間110万円の贈与税の非課税枠をなくして、贈与した財産も相続発生時に一緒に課税する『相続時精算課税制度』に一本化するやり方や、現行では亡くなる前3年以内の贈与は相続財産に含めるというルールの適用期間を10年以内、15年以内といった具合に延ばす可能性もある。
新制度のスタートがいつになるかも明らかになっていませんが、法改正の審議や周知期間を含め早くて2023年度から新制度が適用されるのではないか。いずれにせよ、現行の110万円の非課税贈与が使えなくなる可能性があり、生前贈与を考えている人はやっておいたほうがいい」(木下氏)
今年の非課税枠は年内いっぱいの贈与に適用されるので、残り時間はわずかだ。
※週刊ポスト2021年12月17日号