企業が大学名によって学生をふるい落とすという就職活動の「学歴フィルター」問題。もちろん、建前上その存在を公言する企業はなく、これまでは“暗黙の了解”として知られていた。だが近年、SNSやネットの普及から就活生の声が可視化され、その存在が明るみに出やすくなっている。つい先日も就職情報会社が就活中の大学生らに対し、「大東亜以下」と件名に記したメールを送っていたことが判明し、大きな騒動となったばかりだ。
学歴フィルターが話題になるたび、学生を学歴によって選別することに賛否の声が上がるが、「はじかれる」対象となってしまう“中堅大学レベル”以下の人たちは、どのようなシーンで学歴フィルターの存在を実感するのだろうか。OB・OGたちのリアルな声を集めた。
説明会の予約ではいつも「満席」表示
「何でも平等なわけがない。それだけ努力した人が得る特権だと思っています」
そう言うのは、都内の中堅M大学出身で、現在メーカーに勤務する20代の男性・Aさんだ。就活を始めた当初、学歴フィルターは「都市伝説だと思っていた」というが、そんなことはなかった。今でこそ達観しているAさんだが、その存在に直面した時は困惑したそうだ。
「ネットから会社説明会に申し込もうとしても、常に『満席』が表示され、予約ができませんでした。参加できないと応募できない場合もあります。焦っている時に、偶然上位校であるS大学に通う友人と話をしていたら、友人は予約に困ったことがないと聞いて驚いたのを覚えています。現実に悲しくなりましたが、どうしても参加したい場合は、企業に直接電話しました。『当日にキャンセルが出ればでかまいませんので……』とか粘ってみると、参加させてくれる企業もありました」(Aさん)
Aさんはその友人と同じ企業を受けたことがあった。Aさんは書類選考を通過できず、友人は通過してそのまま内定までこぎつけた。
「友人のエントリーシート(ES)を見せてもらったのですが、正直、そこまで私よりも内容的にが優れているとは思えませんでした。でも、気づいてしまったんです。同じくらいの内容なら、大学のレベルが上の学生を選ぶのは当たり前ではないかと……。ただ、私のESを一切見ないで足切りしていたとしたら、ESを書くという労力が無駄。それならいっそ、応募資格として『○○大学以上』と書いてもらったほうがお互いのためじゃないですか?」(Aさん)
社会に出てから数年、今も話題になり続けている学歴フィルター騒動に思うことがあるという。
「大学名で絞るフィルタリングは、いわゆる優秀な学生を効率的につかまえる手段としては仕方ない部分はあるとは思います。問題は学歴フィルターがないと建前では言って、広く募集しているように見せかけ、実際は足切りをしっかりしていること。そんな“ステルス学歴フィルター”が問題なのでは」(Aさん)