実質改悪の“目眩し”政策
さらに、岸田文雄総理の肝入りで新設された「事業復活支援金」も、実質的には改悪されたと言って良い。これは、新型コロナウイルスの影響を受けて売上が減少した中小企業や個人事業主に対して給付される支援金で、2021年2月に申請が終了した「持続化給付金」の後継とも位置付けられるもの。持続化給付金は、対象期間でひと月の売上が前年同月より「50%以上減少」した場合、中小企業法人には最大200万円、個人事業主には最大100万円が支給されるという仕組みだった。
これに対して事業復活支援金は、対象期間でひと月の売上が前年もしくは前々年同月より「30%以上減少」した場合に支給されるよう減収率の要件が緩和され、法人の支給上限額も最大250万円に拡大した。だが、事業復活支援金の上限額250万円が支給される条件は、「年間売上高5億円超」の法人のみだ。全国の日本の中小企業のうち、年間売上高が5億円を超える企業は、現実にはほんのわずかしかない。
さらに言えば、個人事業主の持続化給付金の最大支給額は100万円だったが、事業復活支援金では売上が50%以上減少した場合でも支給額は最大50万円と、上限額が半減している。これらを踏まえて考えると、事業復活支援金の予算規模は、持続化給付金の3分の1程度にしかならないと考える。政府は一見、前回の仕組みよりも拡充したようにも見せているが、実際はこれも“目眩し”の政策なのだ。
コロナ禍で厳しい状況に追い込まれた人たちを救うためのものなのに、今回の経済対策は昨年度より大幅な緊縮財政となっている。「過去最大」と言われながらも、その中身はスカスカだ。これでは、景気回復に寄与するはずもない。米国は、所得制限付きではあるが、国民への現金給付だけでも既に3回行ない、1人当たり合計約36万円を支給している。今回の経済対策が本当に有効かどうか、政府はもっと議論を尽くすべきだろう。