この時、経営者などを含めた総合ランキングで突如として89位にランクインしたのが、元カーレーサーの漆原徳光氏だ(納税額は3億3171万円)。1972年の富士グランチャンピオンレースではシリーズランキング2位になるなど活躍したが、1980年代以降は父親の不動産業を継いだため、レーサーを引退した。
「父は戦時中、軍需工場の社長をやっており、3月10日の東京大空襲の前には従業員に向かって『B29の標的になるから逃げろ!』と言い、それを憲兵に知られて捕まり、殴られたという人です。長者番付に載ったのは、その父の遺産を相続したからです」(漆原氏)
80歳を目前にした現在も、レーサー時代と変わらない運転能力を保持しているという。
「ポルシェやランボルギーニなど手放したものが多いですが、今もそれなりの車には乗って運転を楽しんでいます。ただ、周囲の運転マナーや交通法規遵守の心構えがどんどん後退しているのを見ると、日本人は過去の遺産を食い潰していると感じますね」(同前)
※週刊ポスト2022年1月1・7日号