岸田文雄・首相が9月の自民党総裁選で掲げたのが「金融所得課税の強化」だ。一時は封印したが、与党税制改正大綱には「課税のあり方について検討する必要がある」と明記された。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏が解説する。
「給与などにかかる個人所得税は、基本的に収入が多いほど負担が重くなる累進課税(復興税を除けば住民税と合わせて最大55%)です。その一方、株式の譲渡益などの金融所得の税率は一律20%。そのため金融所得が多い人の税負担が軽くなり、それを是正するために課税強化が打ち出されたと考えられます」
株投資で定年後の資産寿命を延ばそうと考える場合、注視すべき動きだが、対抗する方法として深野氏は「NISA(少額投資非課税制度)を使った投資を早めに始めるとよい」とする。
「現行制度では、年間120万円までの上場株や投資信託などへの投資の運用益が5年間、非課税になります。累積での非課税投資枠は最大600万円です」(深野氏)
非課税枠を使うことで課税強化に対抗するわけだが、深野氏が早めに始めることを薦めるのは、2024年から「新NISA」がスタートするからだ。
「新制度は、“2階建て方式”になります。1階部分は投資信託の積み立てについて非課税投資枠が年間20万円となり、現在の『つみたてNISA』とほぼ同じ制度。2階部分が今のNISAの非課税投資枠を年間102万円(5年間)にするというものです。
1階部分は若い人が長期間、積み立てるのに向いている制度で、定年前後の世代には好まれませんが、新NISAでは1階部分の積み立て投資をやらないと、2階部分を利用できない。しかし、2024年時点ですでにNISAを始めていれば、“2階部分のみ”の利用が可能なのです。だからこそ、新年の早い段階からNISAを始めておくことにメリットがあります」(深野氏)
上に政策あれば、下に対策あり──2022年以降に次々と負担増を強いられるのなら、賢く対応する備えが必要になる。
※週刊ポスト2022年1月1・7日号