団塊世代、氷河期世代……。生まれた年によって○○世代と一括りにし、世代ごとに異なる特徴や事情が語られることは多いが、当事者にとっては独り歩きする厄介なイメージを押し付けられることも多いようだ。だが、同じ世代の中でも、生まれた年によって“濃淡の差”がある。
たとえば「ゆとり世代」の場合はどうだろうか。ゆとり世代とは、大まかに言えば、1987~2004年頃に生まれた人たちで、学習指導要綱の改訂により、2002~2011年の間に義務教育を受けた世代を指す。そのうち1987~1989年ごろに生まれた「ゆとり第一世代」は、小学校ではそれ以前の人たちと同様の教育を受け、中学生の時に新学習指導要領に切り替わった。だが、そんな事情を知らない人たちからは、ただ「ゆとり世代」とひと括りに思われているようだ。「ゆとり第一世代」の当事者たちが、本音を語った。
円周率は3.14、台形の公式も習っている
メーカーに勤務する30代女性・Aさんは、1987年生まれ。ゆとり世代へのイメージの悪さを常日頃から感じてきたが、「ゆとり世代について悪く言わることには慣れた」と笑う。
「ゆとり世代というだけで、競争意識がない、自発的に行動できない、プライベートを優先する、コスパ至上主義、お金を使わない、出世欲がない……みたいな、とにかく“やる気がない”イメージのようです。いつだったか、私が免許を持っていないという話が出た時、50代の上司から、『ゆとりだもんね~』と謎の返しをされました」(Aさん)
だが、Aさんが我慢ならないことはほかにある。「ゆとり教育の象徴」とも言われる小学校で習う円周率や台形の公式についてだ。
「新卒で入社した時、『ついに、ゆとり世代が入社してきた!』と社内で話題になったそうです。先輩社員の一人から、『“円周率はおよそ3”、だったんでしょう?』とか、『本当に台形の公式を知らないのか?』とか、ニヤニヤして聞かれました。厳密に言えば、私のようなゆとり第一世代は、小学校の時に3.14も台形の公式も習っているんですが、面倒で言い返さないこともあります。というか、それを習っていなかったとしても私たちのせいじゃないし、習っていないことがどう関係するのか」(Aさん)
就職活動は売り手市場の「谷間」
ゆとり世代は全体的に就職活動が「売り手市場」だったと思われがちだが、「ゆとり第一世代」に、それは当てはまらない。2008年に起きたリーマン・ショックが直撃し、就職活動で苦労した人も少なくない。IT企業に勤務する30代男性・Bさんもその一人。1987年生まれだ。