資産価値があり、ステイタスを満たせるアイテムとしても根強い人気を誇る高級腕時計。だが、スマートフォンが普及した現代、「時間が分わかれば良い」と思っている人にとっては、「どうしてわざわざ高額なお金を払って時計を買うのかわからない」という人もいるかもしれない。数々の高額な時計を所有する東京・港区在住の会社経営者・Nさん(40代男性)に、時計を身に付ける意義について聞いた。
Nさんが時計の世界に目覚めたのは、この1~2年のこと。何気なく手に取った雑誌がきっかけだったという。
「時計といえば、これまでロレックスぐらいしか知らなかったのですが、ある時ファッション誌を眺めていたら、スイスの老舗時計メーカー、ジャガー・ルクルトの『レベルソ』という時計が目に入りました。その時計は90周年を記念した特別モデルで、シックで美しい赤にひと目で魅了されたんです。
値段は300万円ほどだったのですぐにでも買おうかと思ったのですが、他の選択肢も見ておきたいと思い色々調べていくと、人気で手に入りにくい時計の多くは、最低でも1本1000万円以上はすることが分かりました。しかも、そうした人気の高級時計は生産数が限られていることもあって、どの店でもほとんど品切れ。中古で購入しようと思っても、定価の数倍に高騰している状況でした」(Nさん・以下同)
手に入りにくい時計ほど市場価値が上がり、価格は高騰しやすい。特にコロナ禍が始まって以降は、資産価値の高い高級時計の価格も極端に値上がりしている。
「そんな中出会ったのが、スイスの老舗時計メーカー、オーデマ・ピゲの『CODE11.59 フライングトゥールビヨン』です。キラキラと控えめに光るブルーの文字盤が美しく、見た瞬間に一目で気に入ってしまいました。メーカーのホームページには価格が記載されていなかったのでお店で直接聞いてみると、2000万円ほど。想定を大きく上回る価格でしたが、何とか手に入れました」
当初は300万円の時計を買うつもりが、2000万円もの高額な買い物をしたNさん。ちょっとした家も買えてしまう金額だが、高級時計のどんな点に価値を感じているのか。
「もちろん資産として所有するメリットもありますが、時計そのものの魅力にすっかり心を奪われてしまったという方が強いです。デザインや質感など、高額なだけあって想像を絶するほど作りが良く、数百万円クラスの時計と比較してもモノの格が全く違うと言いますか。じっと眺めながらお酒が何杯でも飲めちゃいますね。工芸品、宝飾品に近い存在です。それに、高級時計を付けていると時計好きの男性には分かるもので、仕事の場などで話が盛り上がることもよくあります」