同じマンションでも防犯上の理由や、眺望を楽しめるなどの要素で人気の「高層階」。低層階より家賃も高く設定されていることが多いが、実際に住んでみると、想定していたメリット以上に、デメリットが気になる人もいるようだ。住んでみて初めてわかったマンション高層階の現実とは。実際の住人たちの声から探ってみよう。
通勤時はエレベーターが渋滞
IT企業に勤める40代男性・Aさんは約1年半前、都内の中心地からはやや外れるが、通勤圏内にあるタワーマンションの高層階の部屋を購入。転機はコロナ禍のテレワークだった。
「以前から高層階の見晴らしの良さに憧れを持っていました。コロナ禍を機に在宅勤務になり、都心は無理でも少し外れれば手が届くし、通勤が再開されたとしても十分に通える距離でしたから、妻とも話し合い、29階の物件を購入することに決めました」(Aさん)
転居後、しばらくは「眺望の良さ」にうっとりしていたAさん。在宅勤務の休憩時間にリフレッシュ、夜は夜景を“つまみ”に眺めながらお酒を楽しんだという。だが、週2~3日の出勤が発生すると、デメリットも顔を出し始めた。
「通勤時は、エレベーターを待つのに10分弱かかることもありました。駅まで徒歩8分でも、このエレベーター渋滞分を合わせると徒歩15分以上と変わらない計算になります。エントランスまで降りてから忘れ物に気づくと、絶望的な気持ちになりますし、帰宅途中にトイレに行きたくなって一刻も早く家に戻りたい時も大変で、いつもよりエレベーターが遅く感じました」(Aさん)
最近は地震も多く、そのことも後悔するようになった理由のひとつだという。
「強い地震があった時、高層階ほど大きく揺れるということは聞いていたのですが、正直こんなにぐらんぐらん揺れるのかと思うほど揺れて、酔いました。しかも2日くらいエレベーターが使えなくなり、困りましたね。階段の上り下りがつらくて、持病の腰痛が悪化……。29階にたどり着くまでに、四つ這いでハイハイ状態になって階段をのぼりました。
今考えれば、景色よりもPCモニターを見ている時間の方が長いし、景色も毎日見ていたら慣れてしまって、早くも飽き気味。最近、妻がイライラしていて、ことあるごとに、『あなたの意見は当てにならない』と言われるようになり、夫婦仲にヒビが入っています。こんなことなら、低層階でもいいので、都心にもっと近いマンションを買うべきでした」(Aさん)