ワクチン接種が進み、日本も新型コロナの収束へ向けて一歩を踏み出したように見える。だが、この1年で様変わりした日本社会が、コロナ後に「すべて元通り」になることはない。
顕著な例が、住まいだ。『激震!コロナと不動産』(扶桑社)の著者で不動産ジャーナリストの榊淳司氏は、首都圏の状況を例にあげ、「コロナ後に住まいの常識は一変する」と語る。
「リモートワークの定着が大きな要因です。企業側もオフィスの省エネ化を進めており、コロナ後もリモートワークの継続を掲げる会社は多い。これまでの住まい選びは『通勤に便利かどうか』が重要な指標でしたが、それが根底から崩れたわけです。
影響が避けられないのが、『ベッドタウン』でしょう。都内の多摩ニュータウン、千葉県の津田沼や幕張といったエリア、神奈川県の武蔵小杉や港北ニュータウン、埼玉県のさいたま新都心などです。そもそも出社する必要がないので、かつてのような“寝るためだけに帰る家”のニーズは減っている。ベッドタウンという存在意義が揺らいでいるのです」(榊氏・以下同)
一方で、コロナ後に人気が上がるとみられる町もある。
「郊外の自然環境の豊かな町が注目されています。山側なら東京の高尾や山梨の山中湖、海沿いなら神奈川県の湘南エリアや静岡県の熱海ですね。毎日通勤する必要がなくなったことで住む場所として検討される範囲が広がったこともあり、このあたりまで選択肢に入れる人が増えてきました。もともとこれらのエリアの住宅は余剰ぎみで、不動産価格が急激に上がることもない点も後押ししています」
また、コロナ収束後の生活を見据えてのことだが、通勤に費やしていた1~2時間が自由時間になったことで、自宅に近いエリアで気軽に楽しく飲んだり食べたりできる店が多いことを重視する人が増えているという。