新型コロナウイルスの出現から2年。低迷が続いた日本経済は復活するのか。第一線の論客である森永卓郎(経済アナリスト)、永濱利廣(第一生命経済研究所首席エコノミスト)、馬渕磨理子(経済アナリスト)の3氏による座談会を開催。2022年の経済について語り合った。【全3回の第1回】
永濱:日本の景気はこの2年間がコロナ禍で最悪だった分、2022年は若干戻ると見ています。経済回復に向けて2つの不安を解消することが不可欠で、ひとつはコロナ。そのカギを握るのが経口薬の普及と指定感染症の見直しでしょうね。治療薬に加え、保健所を通さずに開業医でも検査・治療が可能になれば、本格的な回復の道筋が見えてくる。
もうひとつが、国民の過剰な将来不安の解消です。日本では、将来への漠然とした不安感からお金を貯め込む人が多い。その結果、消費に回らず、デフレから脱却できない状況が続いているので、それが解消されていけば完全復活につながると思います。
馬渕:おっしゃるように個人消費の回復が必要です。そのためには、労働市場の「解雇規制」の緩和に取り組む必要もあります。余剰な人材を減らし、生産性を上げて賃上げにつなげていかないといけない。
永濱:株価の見通しでいえば、2022年は7月に参院選、11月に米国中間選挙と年後半に政治的な不安要素があるので、日経平均株価のピークを迎えるのは年前半に3万2000円台が妥当な見方でしょう。
馬渕:企業業績の回復が見込めるので、私は年後半にかけて3万4000円台と予測していますが、掉尾の一振で年末に3万5000円に近づく勢いがあるかもしれません。
森永:いやいや皆さん、楽観的すぎますよ。日経平均は1万5000円になる可能性もあります。株価の割高感を示す指標を見ても、米国の株価は割高とされる水準が2021年末時点で91か月も続いている。ITバブルの時は79か月、リーマンショック前は52か月だったので、いつバブルが弾けても不思議ではない。
世界第2位の経済大国の中国の景気も失速しているし、むしろ世界恐慌になる可能性だってある。ただ、株価が下がる局面ほど儲かる「日経ダブルインバース上場投信」という商品もあって、それを買えば投資のチャンスは広がるでしょう。2022年は“仕込み時”ですよ。
(第2回につづく)
【プロフィール】
森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年生まれ、東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。『情報ライブミヤネ屋』(日本テレビ系)ほか、多数のメディアで活躍中。
永濱利廣(ながはま・としひろ)/1971年生まれ、栃木県出身。1995年、第一生命保険入社。2016年から第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミストに就任。
馬渕磨理子(まぶち・まりこ)/滋賀県出身。京大院卒。経済アナリスト。ニュース番組『FNN Live News α』(フジテレビ系)にコメンテーターとしてレギュラー出演中。
※週刊ポスト2022年1月14・21日号