2022年の日本の景気はどうなるのか──。「身近なデータと景気動向は相関する」という三井住友DSアセットマネジメントのチーフエコノミスト宅森昭吉氏に、読み解いてもらった。
まず宅森氏は、「2021年を通してみると、自殺者数も犯罪数も減少しています」と指摘する。警察庁の統計によると、2021年の自殺者数は7月以降前年同月比を下回っている。11月までで1万9265人で、12月の数字が前年並みであっても2021年の自殺者数は、2020年の2万1081人を0.5%程度下回ることになる。また、刑法犯の認知件数も2021年1月から11月までの刑法犯の認知件数は52.1万件と、前年同時期の56.6万件を8%下回っている。
宅森氏によると、自殺者数と完全失業率ほぼ連動する傾向にあるという。警察庁が発表する自殺統計の自殺者数と、完全失業率の共通データが存在する1978~2020年のデータの相関係数は0.911であり、かなり強い相関がある。これは景気が悪くなって失業率が高まるほど自殺者数が増え、景気が改善し失業率が低下すると自殺者も減る傾向があるということだ。
同様に、犯罪件数も景気が悪化するほど増える傾向にあるが、2021年の景気は悪化せず犯罪や自殺の数が少なかった年だといえる。
政府や日銀の政策や米国景気の影響は多大ではあるが、現実の日本経済を動かしているのは市井の人々による日々の営みだ。「国民のマインドは景気や株価と相互に少なからぬ影響を与え合っており、こうした統計を見ても消費者マインドは決して落ち込んではいないことが見て取れる」と宅森氏は言う。
ちなみにこの冬は太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて海面水温が平年より低い状態が続く現象はラニーニャ現象が発生しており、冬の終わりまで続く可能性が高いとされる。
宅森氏は「ラニーニャ現象が起こっている冬の平均気温は平年並みか低めで『冬らしい冬』になる傾向が強く、衣料や食品など季節商品がよく売れる。新しい年の景気にはプラスに働きそう」と話す。
「大相撲の懸賞本数や中央競馬の売得金、CDシングルの初動売上など景気との関連が深い身近なデータも底堅く推移しており、2022年の景気はまずまずのスタートを切れそうです」(宅森氏)
2018年11月から始まった景気後退はコロナショックによる戦後最悪の急失速を経て、2020年5月を「谷」として終了し、2020年6月から回復局面に入ったとされる。感染の再拡大が心配されるが、2022年も景気拡張トレンドが継続する年であることを祈りたい。