『週刊ポスト』『女性セブン』誌上で読者の様々な“法律のお悩み”に解答してきた竹下正己弁護士。毎号、興味深いお悩みに回答してきた竹下さんは2021年、どんな裁判に強く興味を引かれたのか?
【相談】
コロナの感染状態が、はっきりしないまま、新年を迎えました。昨年は一昨年と同様、ウイルスに振り回された1年となり、自粛のストレスによる陰惨な事件や、経済面でも雇止めの問題などが発覚。そのような1年でしたが、竹下先生が強い関心を示された判例などがありましたら、教えてください。
【回答】
昨年は、夫婦やジェンダーに関する判決が目を引きました。最高裁大法廷は、夫婦別姓の婚姻届を認めない戸籍法を合憲としましたが、4人の裁判官は違憲という反対意見を述べています。
札幌地方裁判所は、戸籍法が同性の婚姻届(同性婚)を認めないのは、憲法14条の平等原則に反すると判断し、注目されました。最高裁大法廷決定は、夫婦別姓は「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」としており、夏の参議院議員選挙を控え、今年は同性婚の問題も含め、これからも論議を呼ぶ可能性はありますが、結局のところ、国民がどの程度の関心を持つかでしょう。
私は特に「表現の不自由展かんさい」事件の大阪高裁決定に関心を抱きました。その「表現の不自由展」は、2019年のあいちトリエンナーレで、従軍慰安婦像といわれる平和の少女像などの展示が批判され、一時中止の事態に。