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職場の人間関係がストレスになる要因 人手不足から生じる「余裕のなさ」も

職場の人間関係の問題は増加傾向にあるという(イメージ)

職場の人間関係の問題は増加傾向にあるという(イメージ)

 人が生きるための当然の営みである「労働」。だが、同じ働くという行為でも、どんな環境で、何をするかによって、健康に与える影響は大きく変わる。職業と病気の関係性において、秋津医院院長の秋津壽男さんが指摘する重大な要素が「ストレス」だ。秋津さんが話す。

「適度のストレスはプラスの要素になりますが、過度になればマイナスです。仕事上のストレスの総量が多いと、健康を損なうことが多い」

 ストレスについては、興味深いデータがある。厚労省の「令和3年版過労死等防止対策白書」によると、2020年の自殺者のうち、「勤務問題」を原因、動機の1つとするものの割合は9.1%。前年より微減したが、この10年はほぼ右肩上がりになっている。

 注目すべきは勤務問題における自殺の動機だ。警察庁の発表によると、例年、「仕事疲れ」がトップだったが、2020年に初めて「職場の人間関係」が1位になった。だからといって、仕事で疲れている人が減ったとは考えにくい。NPO労働相談センター副理事長の須田光照さんが言う。

「労災や職業病もいろいろあり、主に腰痛や筋肉痛のような肉体の負担によるものと、うつや適応障害などの精神疾患があります。最近は、同僚や上司からのパワハラやいじめ、それらのストレスからくる精神疾患の相談が増えています。労働条件が改善して『仕事疲れ』を訴える人が少なくなったというよりも、それをしのぐほど人間関係の問題が増加傾向にあると感じます」

 なぜそれほど職場の人間関係がストレスになるのか。要因として、「余裕のなさ」が考えられる。厚労省の昨年の報告では、2020年に特別養護老人ホームなどの社会福祉施設で働く人で、4日以上の休業を伴う労災の死傷者数は、前年比32.1%増にも上る。原因は転倒や腰痛などのトラブルが頻発したためとされるが、その裏には、人手不足から職員が高齢化していることが指摘される。

「不景気もあり、どの職場もギリギリの人数で回していることが多く、職員一人ひとりの余裕がありません。なかには、『あいつのミスをなぜ自分がフォローしなくてはならないのか』『あいつだけラクしているのではないか』と、同僚のミスや行動につい苛立って、人間関係がギスギスする職場もある。

 懸念すべきは、介護や医療に携わる人たちが心にゆとりを持てず、患者や入所者などケアを受ける人へのサービスに影響してしまうこと。さらに弱い立場の人へしわ寄せがいくことは何としても防ぐ必要があります」(須田さん・以下同)

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