仕事と健康について考えるうえで、大きな要素となるのが「ストレス」だ。実際、仕事のストレスが健康被害につながる危険があることもわかっている。
中国・南方医科大学のユリ・ヒュアン氏らの研究チームは、2015年に米国神経学会が発行する医学誌に、約14万人を対象とした6つの研究結果を解析して発表。「要求されることが多く、自分で決めることが少ないストレスの大きい仕事(看護師、介護士、サービス業従事者など)に就く人は、そうでない人に比べて脳梗塞の発症リスクが58%高い」と明かした。
この調査に対し、ヒュアン氏は次のように語っている。
《ストレスの多い仕事に就いている労働者に対して、効果的な生活習慣改善を指導するとともに、仕事の裁量と自由度を増やすよう調整し、ストレスレベルを下げる介入が必要となるでしょう》
だが、一見“自由気まま”に見える職業でも、健康リスクは否定できない。秋津医院院長の秋津壽男さんが言う。
「ウーバーイーツなどの新しい職業は、人や場所に縛られず、自分の裁量で働けるメリットがあります。しかし同業者でお客さんを取り合ったり、悪天候やクレームにさらされるなどのリスクもある。ストレスと無縁とはとても言えません」
時代は変わったと言えど、ストレスなく働いていくことは難しい。大切なのは、「適度なストレスと長くつきあうこと」だと秋津さんが続ける。
「まったくストレスがない職場では、将来的な認知症リスクを高める恐れがあります。特に、普段の生活で近所の人と気軽におしゃべりできない人は、定年後も長くつきあえるよう現役時代に職場で適度な人間関係を築いておくことが大切です。ストレスの原因になるからと、社会とのつながりや他人とのコミュニケーションを拒絶した働き方をしていると、老後の健康長寿に悪影響となるかもしれません」