米連邦準備制度理事会(FRB)が目標としていた「最大雇用」についても、ほとんどの参加者が、現状において既にこの水準の達成に近いことを認めた。議事録の公表後、市場が予想する3月会合での利上げ確率は8割程にまで上昇した。株式市場は日米ともに議事録公表直後は急落した一方、翌日は落ち着きを取り戻した。ただ、7日発表の12月米雇用統計が市場予想を大きく上振れるようだと、改めて警戒感が高まる可能性があり、高いボラティリティーは当面続くことに留意したい。
FRBの政策動向の影響を受けやすい短い年限を中心に米国債の利回りは大きく上昇、10年物国債利回りも、昨年3月以来となる1.7%台まで上昇してきた。一方、この間、期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下傾向にあり、市場は、インフレファイターとしての姿勢を明確化したFRBの動きなどを勘案し、インフレは次第に沈静化していくと捉えている様子。
名目金利が上昇する一方で期待インフレ率が低下したことで実質金利が上昇し、これが株式相場の重しとなっている。今後もこの実質金利の動向がカギを握り、とりわけ名目金利の動きが重要視されよう。その上で、一段の金利上昇には警戒が必要だが、今後は金利上昇が一服する可能性もある。海外では新年度相場入りしたことでポートフォリオの見直しを行っている投資家が多くなったとみられ、こうした動きが年明けからの大幅な金利上昇に寄与したと考えられる。そのため、資産配分の見直しが一巡すれば、金利上昇のペースも一服するか緩やかなものとなろう。また、年金などを中心に利回りの絶対水準に着目して債券を買う投資家もおり、こうした存在も金利上昇の一服に寄与することが考えられる。
今後も金利動向に神経質な相場が予想されるなか、今週は米国で12月の消費者物価指数(CPI)や生産者物価指数(PPI)が発表される。また、少し先にはなるが、今月25、26日には今年最初のFOMCも控えており、重要イベントが目白押しだ。イベント前に積極的な売買は手掛けづらく、全体的にこう着感が強い動きが続きそうだ。ただし、金利動向次第ではダウンサイドリスクの方が大きいことに留意したい。
そうした中、徐々に決算シーズンに入る。今週から国内では小売企業を中心に21年9-11月期決算が多く発表される。注目度が高いところとしては、製造業決算の前哨戦として位置付けられる安川電機<6506>が週初11日に決算発表を予定しているほか、12日には半導体関連のローツェ<6323>が発表予定。小売では指数寄与度の高いファーストリテイリング<9983>が13日に控える。そのほか、足元下落が厳しいグロース関連では、13日にSansan<4443>、週末14日にはなるが、ベイカレント<6532>、SHIFT<3697>、マネーフォワード<3994>などが予定されており、決算を機に見直しにつながるかに注目したい。ただ、金融政策関連のイベント前であることを考慮すると、積極的な上値追いは期待しにくく、ポジティブに反応しても買いが続かない可能性に注意したい。
なお、今週は11日に11月景気動向指数、12日に12月景気ウォッチャー調査、中国12月CPI、中国12月PPI、米12月CPI、13日に12月都心オフィス空室率、12月工作機械受注、米12月PPI、14日に12月企業物価指数、米12月小売売上高、米12月鉱工業生産などが発表予定。