投資情報会社・フィスコが、株式市場の1月11日~1月14日の動きを振り返りつつ、1月17日~1月21日の相場見通しを解説する。
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先週の日経平均は週間で354.28円安(-1.24%)と大幅に続落。2週連続で陰線を形成し、26週移動平均線も大幅に下回った。
祝日明け11日は、米12月雇用統計が労働需給の引き締まりを意識させる内容となり、連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めへの警戒感が一段と広がるなか、米10年物国債利回りが一時1.8%とおよそ2年ぶりの高値を記録したこともあり、日経平均は256.08円安と大きく下落。一方、12日の日経平均は543.18円高と大幅反発。FRB議長の再任指名に関する公聴会でのパウエル議長の証言が一段と金融引き締め懸念を強めるものではなかったことから警戒感が後退。金利が低下に転じたことでハイテク・グロース(成長)株を中心に買い戻された。しかし、週後半の日経平均は13日に276.53円安、14日に364.85円安と再び大きく下落した。
米12月の消費者物価指数(CPI)は39年ぶりの高い伸びとなったが、市場予想並みだった。また、翌日に発表された米12月の卸売物価指数(PPI)は前月比では伸びが鈍化。これを受けて米長期金利は低下したが、この間、複数の連銀総裁から利上げやバランスシートの縮小に前向きな発言が出たほか、ハト派とされてきたブレイナード理事も、FRB副議長への指名に関する公聴会で利上げに意欲を示したことから、金融引き締めへの警戒感がくすぶった。また、日銀がインフレ目標2%を達成する前に利上げ開始できるか議論しているなどと報じられたことも投資家心理の悪化につながったようで、14日の日経平均は一時28000円を割り込んだ。ただ、日銀による上場投資信託(ETF)買いへの思惑もあり、下げ渋ると28000円は回復して週を終えた。
今週の日経平均は堅調もみ合いか。引き続き金利動向に注意は必要も、年明け以降の金融引き締めを巡る動きは一巡してくるとみられる。日経平均は先週末に一時28000円割れを見たこともあり、今週は売り一巡感で下値を固める展開を想定する。
昨年12月開催分の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事録が5日に公表されてからハイテク・グロース(成長)売りが続いている。しかし、公聴会でのパウエル議長の証言は一段と金融引き締め懸念を強めるものではなかった。市場が警戒するバランスシートの縮小(QT)は年後半からとしたほか、QTの決定には2~4回のFOMCでの議論が必要と慎重な言及もあった。
米国の12月CPIおよびPPIも概して市場予想に一致し、米10年国債利回りは10日に1.8%台を付けた後はピークアウト、13日には一時1.70%まで低下した。ただ、FRB高官から3月利上げや早期のQTに積極的な発言が相次いだこともあり、警戒感はくすぶり、週末までハイテク・グロースには厳しい売りが続いた。
インフレファイターへと変貌したFRBの姿勢転換を受けて、市場では年4回の利上げを予想する向きも出始め、長期金利が3%まで上昇する可能性を指摘する声も聞かれる。さすがに、3%まで急上昇する可能性は低く、そこまで到達するにはそれなりに時間がかかるとみられるが、市場の大勢の予想からは年内に2%まで上昇する確度は高いと思われる。期待インフレ率の指標とされる米10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI)は低下基調にあるとはいえ足元2.4%程で推移しているため、実質金利は当面マイナスが続くだろう。そのため、中長期では株式にとって過度にネガティブな状況ではない。ただ、急速にタカ派にシフトしたFRBに対する市場の“完全な”織り込みには時間を要するうえ、実質金利のマイナス幅縮小には短期的にはネガティブに反応せざるを得ないだろう。