中川淳一郎のビールと仕事がある幸せ

「なんのために東大に…」我が子の就職先に納得いかない東大出身者の親の嘆き

東大卒業者の親は子供の就職先にどんな思いを持っているのか

東大卒業者の親は子供の就職先にどんな思いを持っているのか

 東京大学といえば、日本最高峰の大学として知られ、もし息子/娘がそこに合格したなら親としても鼻が高いのではないだろうか。我が子が東大に合格した時点で、将来は一流企業に就職して、定年まで安泰……なんて想像する人もいるかもしれない。その一方で、東大に入った我が子が予想もしなかったような職業に就いたら何を思うのか。かつて、そうした親の思いを取材したことのあるネットニュース編集者の中川淳一郎氏がレポートする。

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 私が大学3年生(1995年)の夏、外資系コンサルティング会社でインターンをしたのですが、この時、「東大卒業者の進路」というレポートを東大の院生と2人で書きました。このレポート作成時に東大出身者の親の話も聞いたのですが、そこで印象深かった「私が思い描いていた我が子の進路とは違う……」という嘆きを紹介したいと思います。

 このレポートを作成した時は、東大の就職課まで行き、卒業生たちの進路を見せてもらいました。今ではこんな情報を外から来た人間に簡単に見せるとは思えませんが、当時は「はい、どうぞ」という感じで、アポ無しで見せてくれたのです。

 我々は「いわゆる東大生が行きがちな進路を選ばなかった人の理由」を知りたいと考えました。官僚・弁護士・地方公務員・総合商社・生保/損保・都銀・地銀・政府系金融機関・大手メーカー・大手マスコミ・外資系コンサル・外資系金融機関などに行かず、「えっ? 珍しいなこの進路」という3人をピックアップしました。

「やっと私の悩みを理解してくれる人があらわれた」

 その3人はテレビの制作会社・A社へ行った男性、聞いたことのない横文字の会社・B社へ行った男性、そして「不明」の男性です。いずれも自宅(実家)の電話番号が記載されていたので、本人に繋がる電話番号を教えてほしい、と実家に電話をかけました。

 趣旨を伝えると、電話に出てきた3人(全員母親)は、堰を切ったように喋り始めたんですよ。いやいや、あなたの息子さんと喋りたいのですが……と思うも、「親の思い」もなかなか興味深いものでした。なお、B社は、小さなコンピューター関連の企業(今でいうところのIT系)、「不明」の人は無職だそうです。3人の母親は口を揃えて、「そういうことを調べてるんですか。聞いて下さいよ~!」と言いました。「やっと私の悩みを理解してくれる人があらわれた」と思ったのかもしれません。まずは制作会社・A社へ行った男性の母。

「普通東大っていったらどんな会社でも入れるでしょ? それなのに、なんであんな小さな制作会社なの? 映像が好きなんだったらNHKも東京の民放もあるのに、何を好き好んで“あんな会社”へ……」

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