年後半に待ち受ける日本株の悪材料
これまで世界中の投資家は、低金利と流動性供給によるカネ余りの状況を当然のように捉え、“コロナ禍でも株高が当たり前”というマインドに包まれてきた。行動経済学の観点で言えば、市場の阻害要因をコントロールできると多くの市場参加者が思い込む「コントロール・イリュージョン」が働いていたわけだ。しかし、利上げやバランスシート縮小などによってその前提が崩れれば、「コントロールの欠如」に陥ることは十分に考えられるだろう。
実際、米国の長期金利上昇に伴って、割高感の強かった米国のIT企業の株は軒並み売り込まれている。同時に、外部環境(特に米国株)に左右されやすいことから「世界の景気敏感株」と呼ばれる日本株も乱高下に見舞われている。日経平均株価は足元の激しい値動きのなかでも、年前半こそ、2万9000円~3万円を目指す展開があるかもしれないが、問題は年後半だろう。不安材料がいくつも予想されるのだ。
7月に予定される参院選で波乱が起きるとは考えにくいが、11月の米中間選挙で民主党が負けて、上下院で多数派が異なる「ねじれ議会」となった場合の混乱は十分に予想される。また、何より中国経済の減速が際立っており、「世界の景気敏感株」である日本株は上値が重い展開が予想される。
いまのところ、2022年の日経平均株価は2万7000円~3万円のボックス相場での推移を見込んでいるが、「コントロールの欠如」によって、株価は「下がるから売る、売るから下がる」という事態も予想される。投資家は「株価はいつまでも上がり続けるものではない」という基本にいま一度立ち返り、世界の投資家心理の変化に目を凝らすべきだろう。
【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。法政大学大学院教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。最新刊は『ゲームチェンジ日本』(MdN新書)。