一方、「直接、不動産会社に依頼」する場合はどうだろうか。
「その地域に最も強いと思われる不動産会社を中心に2~3社に査定を依頼して、価格とその根拠、そして売却成立までの戦略をどのように考えているかを聞いて、自分が最も納得できる不動産会社・営業マンにお任せするというのがオーソドックスなやり方だと思います」
「一般媒介契約」と「専任媒介契約」どちらを選ぶべき?
不動産会社に依頼する場合は、媒介契約を締結しなければならない。所有している物件の売却活動をどのような条件で行い、成約した際の報酬金額をどうするのかといった内容を定めて媒介契約書を取り交わすことを「媒介契約」という。
これには大きく分けて「一般媒介契約」と「専任媒介契約」がある。ざっくりいうと、同時に複数の不動産会社と契約できるのが前者で、1社とのみ契約するのが後者となる。どういう条件のときに、どちらの契約形態を選べばいいのだろう。前出の長嶋さんが解説する。
「非常に売れ筋の物件であれば、『一般媒介』にすることで不動産会社が競争して早い者勝ちで動いてくれるので、比較的高値で売れることがあり得ます。そうでなければ『専任媒介』にするのが無難です。
売れ筋物件ではないのに高く売ろうとして『一般媒介』にしてしまうと、不動産会社の担当者が誰も本腰を入れてくれずに時間だけが経ってしまうということになりかねません」
相続が発生したときなどは不動産会社に依頼する前段階で、不動産コンサルタントに依頼するのも有効だ。「不動産会社に相談すると売却が前提となって話が進むが、不動産コンサルタントであれば、複数の相続人との関係を客観的に見定め、不動産マーケットを加味し、心情を加味した上で必ずしも売却だけでない解決法を提示することがある」(長嶋さん)という。
不動産の売買は、人生でそう何度も遭遇する出来事ではないだけに、上手に専門家の手を借りて納得のいく契約にたどり着きたいものだ。
◆取材・文/岸川貴文(フリーライター)