「中小企業の6割は赤字。賃上げ税制は効果がない」という批判もあるが、資本金10億円以上の企業が貯め込んだ内部留保(利益剰余金)は2020年度末には過去最高の466兆円に達しており、業績好調な企業ほど賃上げによる減税効果は大きい。
中小企業も、「人材不足は深刻、赤字でも賃上げしないと人材確保できなくなっている」(人事担当者)という状況だ。前出の関氏が言う。
「給料が上がれば、個人消費の拡大につながるし、賃上げする企業にとってはコストが増えるから、生産性もおのずと改善されるわけです」
現在、ガソリンや食品の値上げが相次ぎ、日銀は今年の物価見通しをプラス1.1%に上方修正した。賃金が上がらずにインフレが進む「悪い物価上昇」が心配されている。
しかし、この春闘をきっかけに日本社会が賃金上昇時代に入り、消費が拡大、それに伴って物価が上がるなら「良い物価上昇」に変わり、日本経済は再びかつてのような力強い成長路線に向かう。
※週刊ポスト2022年2月11日号