中国語が話せないと仕事がない
そもそもニセコに目をつけたのは、中国系よりもまずオーストラリアを中心とした南半球の国の人たちだった。自国が夏の間にウインタースポーツを楽しむため、コンドミニアムや別荘などを買い漁り、“英語圏”の街を作ってきた。それが入れ替わるようにして中国系が増えた事情を、前出の佐藤町議が説明する。
「2011年の東日本大震災で原発事故があってからオーストラリア人が減少する一方、香港や中国といったアジア系の人たちが増えてきました。ニセコを気に入っていただける外国の方にはぜひ来てもらいたいですが、コロナ前には雪が溶けると空き缶などのゴミが街中に出てくるなど、外国の方とのトラブルが絶えませんでした。
中国人投資家らの中にはニセコを活性化させようとしているのではなく、投資として購入している人たちもいるようで、このままズルズル買い占められていくことには一抹の不安を抱いています」
コロナで中国人観光客の来訪は途絶えたが、それでも中国系資本による買い占めの流れは止まらない。地元の不動産業者はこう言う。
「中国人の投資家たちは『2002年のSARS後に土地が値上がりした』という経験から、コロナ後の値上がりを期待してニセコの不動産を買い漁っています。国内でのウインタースポーツ人気の陰りに加え、長期化するコロナ禍の苦況から売りに出す人も多く、ニセコはリゾート地のなかでも安価で購入できると見られているようです」
中国人投資家がニセコ地区に熱を上げる理由はそれだけではない。
「2030年には北海道新幹線が倶知安に通り、高速道路も開業するためニセコへのアクセスが格段に良くなる。すでに将来の需要増を見込んで、倶知安町の花園地区では、パークハイアットが開業するなど高級リゾートホテルの建設ラッシュが始まっています。中国人投資家には魅力的に見えるのでしょう」(同前)
コロナが収束すれば海外から再び観光客が押し寄せることになる。コロナ禍で再開発が進んだことで、今まで以上に外国人が訪れることが予想される。
その状況をどう受けとめるかは、地元住民の中にも温度差がある。
「昨シーズンのニセコ地区の飲食店全体の売り上げはコロナ前の8~9割減と言われている。総合振興局が地元飲食店に弁当を発注するなど官民が協力して自助努力を重ねてきたが、さすがに限界に近い。中国人観光客に早く戻って来て欲しい」(飲食店経営者)