五輪終了後には政治協商会議、全人代…
1月に入り、北京市の中心から南西方向に位置する豊台地区で新型コロナウイルス感染者が発覚、都市封鎖こそ行われていないが、この地区の住民は全員、48時間に1回の割合でPCR検査が義務付けられている。また、その他の地域でも希望すれば、直ちに無料で検査が受けられる体制となっている。
今後、再び都市封鎖が行われるかもしれない恐怖感から、北京でもネットで保存食を注文する人が増えているようだが、流通効率が落ちており、配送に遅れも生じている。
北京冬季オリンピックは2月20日に終わるが、3月4日には政治協商会議、5日には全人代が始まる。両会の開催に当たり、数日前から地方政府の要人が北京に集結、厳重な警護が行われるために、北京市内は至る所で厳しい交通規制が敷かれる。会議が始まってからでないと閉会の時期は分からないことが多いが、例年であれば2週間程度で閉幕となる。ゼロコロナ対策のために今回は1週間から10日程度に短縮される可能性もある。
パラリンピックが3月4日から13日までの日程で開かれるが、それに伴う規制もあるだろう。北京の住民にとって、少なくともこれから3月中旬までの期間は、憂鬱な日々が続きそうだ。
ゼロコロナ政策は中国の国策である。感染者が見つかり次第、いつでも、どこでも、速やかに厳しい規制が実施される。特殊な時期の特殊な対策ではない。移動制限による人民の負担は大きく、景気に対して大きな下押し要因となる。消費に与える影響が大きいが、生産や流通への影響も無視できない。
社会主義経済体制下では中央のマクロコントロール力は強大で、国内でモノが不足がちになれば、当局の指示により商品が輸出に回らなくなる懸念もある。2021年の米国向け輸出は意外に好調で27.5%増(ドルベース)であったが、理由は別にあるとはいえ米国向け肥料の輸出は36.9%減となった。12月単月では53.3%減である(全体では21.2%増)。中国国内で肥料需給が逼迫したので輸出に回らなくなったのだが、同じことがいろいろな製品で起きかねない。
米国では、バイデン政権の不人気が深刻だ。そこにインフレが直撃、民主党の支持基盤の一つである庶民の生活が特に苦しめられている。さらに最大の輸入先である中国からモノが届かなくなればどうなるか。貿易大国中国のゼロコロナ政策は、インフレに苦しむ米国にとっても大きなリスクであるのは、間違いないだろう。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。