アスリートたちの熱い戦いが繰り広げられた東京五輪。その裏には、運営ボランティアの素晴らしい献身があった。アーチェリー男子中国代表の李佳倫選手(28才)に話を聞くと、こう振り返った。
「日本のボランティアの皆さんや、競技場の管理者の皆さんは本当に親切でした。中国語が話せるかたもいて、問題が生じたらすぐに相談して解決することができました。バスの運転手さんにもすごく親切にしていただいて、心より感謝をお伝えしたいです」
思い起こせば、滝川クリステル(43才)が「お・も・て・な・し」と語った2013年の五輪招致プレゼンでは、日本のホスピタリティーへの評価が招致を勝ち取る原動力となった。
ところが、8年前には想像もしなかった“緊急事態宣言下”での東京五輪開催となり、会場は無観客、大会中止を求める批判的意見も飛び交い、日本が誇る歓待精神は行き場を失ったかに思えた。それでも、ボランティアの心が折れることはなかった。ウエイトリフティング男子61kg級に出場した台湾の高展宏選手(27才)はこう話す。
「日本のボランティアスタッフはとても礼儀正しく、優しく接してもらいました」
さらに、アーチェリー女子台湾代表の譚雅テイ(テイは女偏に亭)選手(27才)もこう続ける。
「ボランティアの皆さんの“OMOTENASHI”がとても親切でした。何かわからないことがあってもすぐに駆けつけて助けてくれました」(譚選手)
日本人スタッフの行動から、まるで映画のような出来事も起こった。陸上男子110m障害ジャマイカ代表のハンスル・パーチメント選手(31才)が選手村から国立競技場に向かうバスを乗り間違え、およそ20km離れた海の森水上競技場に到着した。
選手村に戻ってバスを乗り換えていると競技時間に間に合わない状況で、パーチメント選手に救いの手を差し伸べたのは、偶然居合わせた大会スタッフのストイコビッチ河島ティヤナさんだった。