開幕した北京五輪で、真っ先に登場する日本代表のメダル候補のひとりが、2月5日に決勝を迎えるフリースタイルスキー・男子モーグルの堀島行真(24)だ。3日の予選1回目では決勝に進出できる10位以内を逃したものの、5日に実施される予選2回目でチャンスは残っている。今季のW杯では3勝を挙げ、全9戦で表彰台に上がる活躍を見せてきただけに、期待と注目が集まる。そんな堀島の「足元」を支える日本企業の技術があった。
2018年の平昌五輪でも出場選手の6割が使用したメイド・イン・ジャパンの「モーグル板」がある。大阪・守口市に本社がある「マテリアルスポーツ」が展開する『ID one(アイディーワン)』のブランドで、堀島や“上村愛子2世”と呼ばれる川村あんり(17)ら北京五輪に出場する日本人男女8選手のうち7選手が採用している。
同社は、もともと仏製ゴーグルの輸入販売店でスキー板は製造していなかった。長野五輪の翌年となる1999年に、用具提供のかたちでサポートしていた上村愛子から、藤本誠社長がスキー板についての悩みを聞いたところから、ブランドの立ち上げが始まった。以来、『ID one』を履いた上村は、五輪5大会連続入賞(長野を含む)を果たした。
今回の五輪に向けた思いを同社に改めて聞くと、藤本社長は不在だったが開発担当の社員がこう明かした。
「今回はコロナ禍で社員は誰も現地に行っていませんが、日本代表の選手たちが活躍し、注目されることは楽しみにしています。当社のスキー板はすべて国内で製造しており、材料も厳選しているし、職人も丁寧な仕事をしております。モーグルという競技がヨーロッパではあまり大きな扱いではないこともあり、海外のトップ選手にも日本の板を使用する選手が多くいます。選手たちはサポートに対して感謝の気持ちから、表彰台に板を持って上り、“一緒に表彰される”かたちになるので、やはりメダルに届くと私たちも嬉しいですよね」
スキー板だけでなくスキーブーツも日本企業の技術が反映されている。精密機械から飼料添加物まで幅広く開発・生産する「レクザム」(本社・大阪市)はスキーブーツの企画・設計・開発から製造・販売までを手がける。
モーグルは日本選手の活躍が目立つ競技で、1998年の長野五輪で里谷多英が金メダルを獲得し、前述の上村も長く人気選手として活躍した。堀島は平昌五輪で金メダル候補と言われながら、転倒して11位に終わる悔しい結果となったが、北京ではその雪辱を期す。
メイド・イン・ジャパンの技術力を味方に、表彰台の最も高い位置に立つことができるか。メーカーの技術者や担当者も熱い眼差しを送っている。