厳しい冬の寒さが続くこの季節、1日も早い春の到来を待ちわびている人は多いだろう。そこで気になるのが、春の訪れを知らせる「春一番」の時期だ。春一番のメカニズムや注意点について、気象予報士の田家康さんが解説する。
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今年の冬は、例年に比べて特に寒いと感じている人は多いのではないだろうか。実は、昨年12月の月平均気温は、昨シーズンと比べると全国で0.2℃高かった。しかし、12月17日以降、シベリアからの寒波が1月末までに6回にわたって日本列島に襲来。日本海側に大雪を降らせ、東京などの太平洋側では水蒸気を失った冷たく乾燥した寒気が大気を冷やした。これが今年の冬、急激に寒くなった原因だ。
そのため、昨年12月上旬は比較的暖かかったが、下旬以降は寒い日が増加し、東京では年末年始にかけての10日間で、平均気温が平年値(過去30年の平均)をマイナス2℃以上下回る日が7日もあった。1月になっても寒さの傾向は続き、1月の平均気温は昨シーズンや平年値と比較してマイナス0.5℃低かった。
平年値で見ると、日本で最も気温が低いのは1月20日前後。2月に入り、そろそろ暖かい季節へと反転する頃だろう。となると、待ち遠しいのが「春一番」だ。春一番とは、気象庁の定義によると立春(今年は2月4日)から春分(3月21日)にかけて、広い範囲で初めて吹く暖かく(やや)強い南風のこと。風速の基準は各地の気象台によって若干の違いがあるが、概ね毎秒8メートル以上だ。気象予報士の業界内では、「風速が1メートル足りず春一番にならなかった」といった話題が毎年のように出てくる。
この強風は、低気圧が発達しながら日本海を西から東へと通過することで生まれる。低気圧の中心から南東方向(進行方向側)には温暖前線、南西方向(後方側)には寒冷前線が伸び、温暖前線と寒冷前線にはさまれた南側に太平洋海上の暖かい空気が満たされている。そして、寒冷前線の進行方向側では低気圧の中心に吸い込まれるように南西風が吹く。風速は低気圧が発達して気圧が低くなるほど強くなる。この強い南西風が日本列島に暖かい空気をもたらし、私たちは春の到来を感じることになる。