“5年後のトップ経営者”を争うソニー・吉田とトヨタ・章男の2人が、迫り来るEV化で競合する関係にある点にも注目したい。
まだ40~50代の楽天グループ社長・三木谷浩史(5位)、リクルートホールディングス社長・出木場久征(3位)も、「現役」より上位に入った。
出木場久征社長率いるリクルートを「GAFAに対抗し得るポジションにいる」と評すのは前出・鈴木氏。
「(日本の時価総額トップ5の)リクルート株を外国人投資家が買うのは、(リクルートが買収した)米インディードに興味があるから。インディードは人事就活の分野で世界トップのIT企業であり、出木場氏は以前そのCEOを務めていた。米IT事業に着々と投資を続け、リクルートをここまで成長させた人物です」
識者が注目する未来型経営者の筆頭が、クラウドサービス大手のサイボウズ社長・青野慶久(5位)だ。
人事ジャーナリストの溝上憲文氏は、青野率いる同社について「従業員なら誰でも取締役に立候補できるなどオープンな社風」を評価。経済ジャーナリストの磯山友幸氏も、「株主は『経営理念』を共有し応援する存在であるべきという『新しい株式会社』のスタイルを実践・探求している」と見る。
“大政奉還”はあるか
一方、向こう5年の間で「世代交代」が起きるのでは、との読みもある。その点で要注目なのが、唯一「親子」でランク入りしたウーブン・プラネット・ホールディングス上席副社長の豊田大輔(16位)だ。同社は父・章男率いるトヨタの子会社で、自動運転技術やスマート・シティ構想など、グループ全体の先進事業をリードする持株会社。「社運を懸けた事業を担当させるのは、社長候補として力量を試す狙いがある。一定の業績を積めば、数年後には本体への大抜擢があるかも」(経済ジャーナリスト・福田俊之氏)との予測もある。
ほぼ同数の票を集めて10位と11位に並んだのが、サントリーホールディングス社長・新浪剛史と同社副社長・鳥井信宏。鳥井は創業家出身で、新浪の“次”が確実視される。
「アート分野など同社の文化活動は、サントリー中興の祖である2代目社長・佐治敬三氏が始めたもの。その創業家のDNAを受け継ぎ、プロ経営者である新浪社長に鍛えられた鳥井信宏氏は、“大政奉還”が行なわれれば5年後には経営者としてほかにない存在になっている可能性はある」(前出・片山氏)