感染拡大は収束の見通しが立たず、日本経済への深刻な影響が懸念される。加えて資源高によるインフレ、景気を失速させかねない米国の利上げ観測なども重なり、経営者はこれまで以上に難しい舵取りが求められる。いまこそ、この難局に打ち克つリーダーが求められている。有識者32人が選んだ「現役最高の経営者」は誰か──。(別表参照。文中一部敬称略)
世界情勢が混迷を深める現在、日本経済の舵取りを担う企業トップたちに求められる「名経営者」の資質とは何か。経済ジャーナリストの須田慎一郎氏は言う。
「いまの経営者に求められるのは、先行き不透明ななかにあっても確固たる将来展望を描くことができ、リスクを取ってでも新たなマーケットを開拓できる、そんな意欲と能力を持つことでしょう」
本誌・週刊ポストは今回、日本の企業や経営者を長年見続けてきたジャーナリスト、アナリスト、評論家、大学教授ら32人にアンケートを行ない、「現役最高の経営者」は誰かランキング形式で選んでもらった。
混戦を制して1位に輝いたのはソフトバンクグループ社長・孫正義。ベンチャー経営から身を興し、同社をグローバル企業に成長させた。
「創業以来、これだけ戦闘意欲のある経営者は日本でも類を見ない。60歳で引退と言って後継者を決めていたけれど、目の前に面白いものがあるとさらなる投資をする。自分で立てた人生計画を裏切るほどの事業意欲を示す経営者は、孫さん以外にいません」(『経済界』編集局長・関慎夫氏)
孫と1位を争ったのは、EV(電気自動車)分野での躍進が見込まれる日本電産会長・永守重信だ。永守を「創業者でありながら“プロ経営者”でもある」と評したのは経済評論家の鈴木貴博氏。
「モーターという、競争力を維持するのが難しく見える商品を扱いながら、永守さんはM&Aで買い取った会社の経営を立て直して、業績を伸ばし続けている。経営手法的に優れています」
同様に、経済ジャーナリストの井上久男氏もその手腕を高く評価する。
「裸一貫で起業し、世界ナンバーワンのモーター企業に成長させ、そしていま、世界のEVシフトの潮流に乗って売上高10兆円企業を目指す。潜在能力はあるが低収益・低成長の会社を買収し、高成長・高収益に変身させるのがうまい。課題は、後継者を外部から獲得するも定着しないことです」