例年以上に緊張感が高まった今年の中学受験。教育ジャーナリストのおおたとしまさ氏は、コロナの影響で受験競争そのものがさらに苛烈になっていると分析する。
「全私立の定員数に受験者数が追いついたのは2019年のことで、一部の中学に受験者が集中する一方、定員割れの学校も少なくなかったんです。ところが2021年の中学入試では受験者数が14年ぶりに5万人の大台を超えました。背景にはコロナのような有事の際に、公立では柔軟な対応ができないという保護者の不安があるとみています」
もちろん、受験するのは子どもたちだが、いまや父親のほうが前のめりになっている家庭は少なくないようだ。具体的なケースを見てみよう。
娘を女子御三家(桜蔭、女子学院、雙葉)に挑戦させたKさんも、1月下旬からは一度も出社せず、テレワークに徹していたという。
「当然、娘は小学校を休ませました。怖いのは家族が感染者や濃厚接触者になることなので、共働きの妻だけでなく、保育園の下の娘も休んでもらいました。買い物はネットスーパーに任せ、一家揃って1週間以上引きこもりましたね」
Kさん自身、中学受験経験者で御三家に進学している。娘の中学受験を決めたのもKさんだった。
「中高一貫なら友達関係が長く続くし、中3の時に受験を挟むよりはいいんじゃないか……というのは後づけの理由で、本当は地元の公立中学の評判を聞いたら芳しくなかったから。4年生の入塾テストの成績が良かったので、受験をしない手はないなと」(Kさん)
3年間の受験勉強でもKさんは主体的に動いていたという。
「僕が塾の科目も含めてスケジュールを管理していました。毎朝、その日に娘がすべきことを決め、家族のチャットに投稿してから出社する。塾は10クラス以上に分かれていて、成績によってクラスがアップダウンし、席も成績順で決まる。娘がスランプに陥った時は、本人はあっけらかんとしていたけど、僕は胃が痛くなりましたよ(苦笑)。どうしても心配なので2月1日の週は有休をとりました」(Kさん)