そのうち「おつり」という言葉は、算数の教科書から消えてしまうのか? 朝の情報番組『あさイチ』(NHK)で、「イマドキの子供には『おつり』の概念が無い」という内容が放送され、話題となった(1月31日放送)。キャッシュレス化が進むなか、紙幣や硬貨を使う場面が減ったため、小学校の算数の授業で「100円で35円のお菓子と45円のお菓子を買うと、おつりはいくら?」といった質問に「“おつり”って何?」と答えられない子が増えているという先生の声が取り上げられた。キャッシュレス化の進行とともに、教育現場の“常識”も塗り替えられていくのだろうか。
今回の放送内容について、小学3年生の子を持つ40代女性はこんなふうに話す。
「自分自身が買い物の時に電子マネーを使うことが多くなり、たしかに子供はおつりに触れる機会が少ないかもしれません。同級生の子のなかには、スマホを持っていてお小遣いを電子マネーでもらっている子もいるようです。親がクレジットカードを使ってネットショッピングするのも当たり前のように見ていますし、そういう子は目に見える形での『おつり』を知らないかもしれませんね」
コロナ禍もあり急速にキャッシュレス決済が普及しているなか、「現金」そのものを見る機会が少なくなり、結果として子供たちの「おつり離れ」が進んでいるというのだ。
それでは、算数の教科書から「おつり」という言葉が今後消えていく可能性はあるのだろうか。現在、算数の教科書を出版している出版社は6社。主に小学2~4年生の教科書で引き算の計算問題が出てくるが、調べてみると「おつり」という言葉を使った問題文は少なかった。今後は「35円のお菓子と45円のお菓子を買うと、電子マネーの“残高”はいくらでしょう」「いくら“チャージ”をすればいいでしょう」といった言葉に変わっていくのか? 教科書や教材を出版する新興出版社啓林館に話を聞いた。
「実はそもそも教科書で『おつり』という言葉はそんなに使いません。たとえば『340円を持っていて150円の物を買いました』という問題では、『残りはいくらですか』という言葉を使っています。一方、『500円硬貨を持っていて150円の物を買いました』という問題の際には、『おつりはいくら?』となります。実際の買い物では、150円の物を買う時には500円硬貨を使ったり100円硬貨2枚で支払ったりと状況は様々ですよね。そのため、問題によって『残りはいくら』『おつりはいくら』と使い分けています。教科書を作るうえでは多少複雑な計算問題を出したいため、実際にはおつりを求める問題文は少ないのです。