日本人の国民食のひとつとも言われるカレーライス。各家庭の味がある一方で、専門店の本格的な味わいに舌鼓を打っている人もいるだろう。そうした中で、近年、注目度が高まっているのが「町中華のカレー」だ。どうしてあんなにおいしく思えるのだろうか。他のカレーと何が違うのだろうか。
昔ながらの大衆的な中華食堂が「町中華」として注目を集めるようになったのは、この5、6年の話である。『町中華とはなんだ 昭和の味を食べに行こう』の著書がある、ライターの下関マグロ氏が解説する。
「町中華は50年以上前からやっている個人経営の店が多く、大規模チェーンと違ってマニュアルはありません。そのぶん、店主の人柄や味の傾向がはっきり出てくる。本場の中華とは異なり、カツ丼やオムライスなど中華でない料理もメニューにある。こうした“ユルさ”も、町中華の魅力のひとつです」
そんな町中華のメニューのなかで、「カレー」のファンは少なくない。
「昭和の時代からやっている中華食堂にはメニューにカレーがある店が多い。鳥のもみじや豚足からダシをとる“中華スープ”を利用して、煮込まずサラッとしたあんかけ風に仕上げるのが『町中華カレー』の基本です。中華スープを使用することで味にうまみと奥行きが加わり、日本人に馴染みやすい風味に仕上がる。これが町中華ファンの間でウケているんです」(下関氏)
そんな下関氏が「町中華カレーの教科書」として勧めるのは、東京都・神保町駅から徒歩5分、創業60年を超える『北京亭』のカレー。昼飯時の店内はスーツ姿のサラリーマンでにぎわっていた。