そんなBさんは、長距離走の授業でバテてしまい、ペースが落ちて一人周回遅れになった時、体育教師に言われた言葉が印象に残っている。
「『悔しくないのか!』『限界を越えてからが本番だ!』と、熱血指導されました。正直、まったく悔しくありませんでしたし、精神論にはうんざり。足が速い子とか、最後まで頑張る子は心からすごいと思いますけど、みんながみんな悔しがると思ったら大間違いです。ちなみに大人になってからランニングの楽しさに目覚め、皇居ランにも時々行っています。もっと体育はスポーツの楽しみ方、体力のつけ方を教えるべきだと思います」(Bさん)
前に呼び出されて「悪い例」と紹介
体育は理不尽なことが多かったというのは、メーカーに勤務する30代の男性・Cさんだ。ハードルや走り高跳びの授業で、教師から「悪い例」として紹介されたことを挙げる。
「運動が苦手で変な飛び方になっていたことは、自分でもわかっていました。それなのに教師から『みんなの前でやってみろ』と言われ、飛び終わると『今のが悪い例だからな、みんな気をつけろ』と言われてものすごく傷つきました。ひどくありませんか?」(Cさん)
Cさんが通った中学と高校では、男子だけ組体操をすることが伝統だった。「苦痛でしかなかった」と当時を振り返る。
「組体操は、基本的に背の順で支える土台かどうかが決まっていきました。僕は背だけは高く、後ろのほうだったので、ピラミッドでいうと土台です。でも当時はいわゆる“ヒョロガリ”で、体力はゼロ。体重も全然ないのに、自分より重たい人を支えることになって膝は痛いし、崩れると全員から『何やってんだよ!』と怒られるし、怖い思い出しかありません。女子はしなくていいというのが心底うらやましかったですね。
しかも、なぜか上半身裸でやらされるんです(笑)。男子なら恥ずかしくない、という設定なんでしょうか。僕は貧相ということもあって恥ずかしかったし、なんでそんな思いまでしてやらなくてはならないのか疑問でした。トラウマレベルです」(Cさん)
運動が苦手な人たちにとっては、思い出したくもない体育の授業。今では時代も変わって精神論も少なくなっているかもしれないが、当時嫌な思いをした人たちは、何年経っても、その苦しみが消えることはないようだ。