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アサリは氷山の一角「外国生まれでも国内産」の産地偽装が横行するカラクリ

中国湖北省石燕市で栽培されている大量のシイタケの菌床(写真/Getty Images)

中国湖北省石燕市で栽培されている大量のシイタケの菌床(写真/Getty Images)

安価な中国産菌床の輸入が急増

 シイタケ栽培には、クヌギ、コナラなどの広葉樹の丸太に植菌して育てる「原木栽培」と、おがくずなどを固めた人工の培地に植菌して培養する「菌床栽培」がある。原木栽培は出荷まで1年程かかるのに対し、菌床栽培は数か月で出荷可能で収穫量も多いため、安く販売できる。そうした事情もあって、国産として販売されているシイタケのなかには、中国などの外国で植菌を済ませた菌床を輸入し、日本で発生させて収穫したものも少なくない。さらにこの場合、日本での生育期間の長さに関係なく、最終的にしいたけを収穫した都道府県を原産地として表示できるのだ。

 財務省の貿易統計によれば、シイタケ菌床を指す「菌糸(しいたけのもの)」の輸入量は2093トンだった2007年以降、毎年過去最大を更新し続けており、2021年には3万7131トンとなっている。対照的に、不変なのはそのほぼ100%が中国からの輸入という点だ。菌興椎茸協同組合・研究普及局の安田修一本部長が話す。

「菌糸の輸入量から推計される生産量はおよそ1万2000トン。国内の菌床しいたけの生産量は、ここ数年は6万5000トン前後なので、その2割弱が中国産菌床から栽培された国産シイタケということになる。ものにもよりますが、中国産の菌床は国産の半値くらいのものも多いと聞いています。このことが大規模経営や異業種の参入などを容易にしていると言えます」

 肝心の品質はどうなのか。国産原木しいたけ生産者の会の渡邊美広会長が話す。

「シイタケは、原木や菌床など培地の栄養で育つので、中国産の培地を持ち込んで日本で発生させたとしても、中国で収穫されたシイタケと品質は変わらないはずです。もちろん、日本での生育期間が十分に長ければ、気温や湿度などの条件で、中国で収穫まで育ったシイタケと品質が変わる可能性もあります。ただ、手間や栽培スペースなどを考えると、すぐに収穫できる状態の培地を輸入したほうが効率的なので、多くの中国産菌床は、発生間近の状態で輸入されていると考えられます」

 消費者問題研究所の垣田達哉氏は、食品表示法の不備を指摘する。

「かつては業界の慣例でシイタケも長いところルールに従った産地表示がされていましたが、2015年に食品表示法が施行されて以降、原木や菌床は種子などと同様に、長いところルールが適用されなくなりました。2020年以降は、消費者庁がシイタケの収穫地を原産地として表示するとともに、原木や菌床の生産地も併記することを推奨していますが、罰則規定もないため、わざわざ都合の悪い情報を公開する業者はいない状況です」

 中国由来の食品に関しては、衛生面や安全性の懸念も根強い。生まれも育ちも国内のシイタケと収穫だけ国内というシイタケが、同じ「国産」を名乗ってよいものか。消費者の自由選択権を脅かすという点においては、偽装熊本県産アサリと同様ではないだろうか。

アサリの産地偽装を受け、金子原二郎農林水産相(左)に協力を要請するための要望書を提出する熊本県の蒲島郁夫知事(写真/時事通信フォト)

アサリの産地偽装を受け、金子原二郎農林水産相(左)に協力を要請するための要望書を提出する熊本県の蒲島郁夫知事(写真/時事通信フォト)

【プロフィール】
奥窪優木(おくくぼ・ゆうき)/フリーライター。上智大学経済学部卒。ニューヨーク市立大学中退後、中国に渡り、医療や知的財産権関連の社会問題を中心に現地取材を行う。2016年に『週刊SPA!』誌上で問題提起した「外国人による公的医療保険の悪用問題」は国会でも議論の対象となり、健康保険法等の改正につながった。著書に『中国「 猛毒食品」に殺される』(扶桑社)、『ルポ 新型コロナ詐欺 ~経済対策200兆円に巣食う正体~』(扶桑社)など多数。

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