家族が亡くなった後、悲しみに暮れる間もなくやらなければならない葬儀の手配。事前に準備しておきたいところだが、実際は後回しにしてしまう人も少なくないだろう。しかし、慌てて手配したり、勧められるがまま契約した結果、想定以上に高額になってしまうケースもあるという。こんな時どうすればいいか、実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
夫の葬儀を行ったのですが、葬儀社とのトラブルで相談です。当初の見積もりでは、総額約90万円でしたが、実際の請求書は120万円で、頼んでもいないサービスが追加されていました。契約時は、私も初めてのことでよくわからず、担当者の説明も早口で、言われるがまま契約してしまいましたが、頼んでもいないサービスにお金を支払いたくありません。(三重県・70才・主婦)
【回答】
葬儀社との取引は、葬式の作業をさせて、その結果に対して料金を支払うもので、民法上の請負です。業者は合意された請負契約に基づいて料金請求をします。最初に提出された見積もりで契約した場合、合意された請負作業とその代金は、その見積もりどおりになります。
しかし見積もりをもらってから、余計な作業を削ったり、追加したりして再見積もりをとって契約に至ることもあります。その場合は再見積もりの内容が葬儀社の行うべき作業であり、あなたが支払うべき料金になります。ですから、どんな作業をいくらですることになっていたか、契約書を確認することが肝心です。もしそこに、業者から請求されている作業と料金が記載されていれば、支払い義務を免れることは難しいでしょう。
契約を覆すためには、騙されたとか、作業内容に誤解があったなど、法律上の契約の効果を取り消せる事情が必要です。また、あなたは消費者ですから、この取引には消費者契約法が適用され、消費者が契約に踏み切る重要な事実につき、業者が知りながら不実のことを言って誤認させたり、押し売りまがいの強引な営業で契約させたりした場合にも契約の取り消しができます。しかし、早口の説明というだけでは、これらの理屈での支払い拒否は困難です。