逆に、契約書は最初の見積もりのままで、追加サービスは実際に実行されたが、まだ変更の契約がない場合は、業者が追加サービスについて契約成立を証明する必要が出てきます。口約束では追加作業の立証は簡単ではありません。「追加サービスを実施し、あなたが特に止めなかったので、あなたが了解したと思った」と反論されても、葬儀のサービスの詳細を一般の人が知るとは思えないので通用するかは疑問です。
ただ、葬儀社のような事業者は商人として、その行為に商法の適用があり、営んでいる営業の範囲で他人のために行為をしたときは相当の報酬額を請求できます。断ったのに行ったサービスであれば、あなたのためにしたとは言えないので、この規定の適用はありませんが、あなたが黙っていたとすれば、相場の報酬額の請求を受けることになります。
契約は重要です。事前に見積もりがあれば見積書との一致を確認して、判を押すことです。また契約後、内容を変更する場合には、見積もりをとって覚書を取り交わし、変更内容の合意をすることが必要です。さらに、頼んでいない作業を見たら、きちんと断るか、無料であることを確認するのも重要です。
【プロフィール】
竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。射手座、B型。
※女性セブン2022年3月3日号