ウクライナ情勢は混沌としている。ロシアは、経済制裁を恐れて実際にウクライナ侵攻をすることはないという楽観的な意見もあれば、経済制裁をすれば最終的に困るのは資源輸入国の欧米であり、足元を見ているロシアは一歩も引かない可能性があるなどと情報が混在している。衛星情報では、ロシアがウクライナ国境近辺でいつでも戦闘に入れる体制を維持しているとも伝わっており、すでに一触即発の状態だ。このように、ウクライナ情勢を巡っては不確実性が非常に高く、合理的な予想をすることは困難。残念ながら、この先もヘッドラインに一喜一憂する展開が続くだろう。
一方で、地政学リスクの陰に隠れつつあるが、今年最大の相場テーマは金融政策の動向だ。米1月CPIは予想を上振れ、40年ぶり最大の伸びを記録したほか、12月に続き2カ月連続で鈍化が期待されていた米1月PPIも前月比+1.0%と、予想の+0.5%を大幅に上回った。こうした事態を受け、セントルイス連銀のブラード総裁は「6月末までの間に合計1%の利上げを実施すべき」や、「インフレ抑制のためには政策金利が中立金利を超える水準にまで上昇させる必要があるかもしれない」などと、タカ派発言を相次いで出している。
16日に公表されたFOMC議事録が想定以上にタカ派的な内容ではないと受け止められたこともあり、金融引き締め懸念は一時後退し、地政学リスクの陰に隠れる形となっているが、仮にウクライナ情勢が外交的に穏当に解決されれば、再び金融引き締め懸念が強まってくる可能性があろう。
すでに市場は利上げについては先行して年5~7回分を織り込んできているとはいえ、量的引き締め(QT)については、どのくらいペースで、どのような方法で行われるかといった点について、依然不透明要素が多い。利上げとは異なり、QTについては過去に1度しか経験がない。また、その際にはデフレを警戒してかなり漸進的なペースで実施されたが、現在は労働市場が逼迫し、物価は強いインフレ傾向にあるため、今回は少なくとも前回よりはかなり速いペースで行われることがほぼ確実。市場への影響は予測することは難しく、織り込みが進んだうえでのあく抜けに期待するのは危険だろう。
そのほか、先週に決算を発表した米半導体大手エヌビディアは、悪くない内容であったが、直後の株価は急落した。半導体大手の決算反応で地合いが変わる可能性も期待されていたが、ハイテク・グロース(成長)株の手掛けにくさが改めて意識される形になってしまった。3月に入って、米2月の雇用統計を確認し、その後のFOMCを通過するまでは当面、これまでの物色動向が続きそうだ。ハイテク・グロース株は急落とまではいかずとも軟調が続き、地政学リスクがむしろ追い風にもなっている原油をはじめとした資源関連株は強い動きが続こう。三井物産<8031>や三菱商事<8058>をはじめとした総合商社の株価チャートは日経平均やTOPIXとは対照的な上昇トレンドだ。今は強いものに付いていくしかないだろう。
なお、今週は22日に1月企業サービス価格指数、米12月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米2月消費者信頼感指数、米2年国債入札、23日に米5年国債入札、24日に米10-12月期GDP改定値、米1月新築住宅販売、25日に米1月個人支出・個人所得、米1月NAR仮契約住宅販売指数などが発表予定。