NHK広報局は『週刊ポスト』の取材に対し、「社会実証実験は『ネット受信料』を前提や目的にしたものではありません」と回答する一方で、「今後の受信料のあり方については、様々な研究をしているところです」とも答えた。
嘉悦大学教授で元内閣官房参与の高橋洋一氏は、ネット受信料の徴収は現実的に難しいと見る。
「視聴スタイルが様々に変化するなか、パソコンやスマホなどのネット視聴すべてに受信料をかけるのは無理があります。そもそも世界的に見て、受信機に受信料を課す公共放送は大きなところではイギリスのBBCとNHKくらい。そのイギリスでも文化大臣が、受信料制度の見直しを議論すると言うなど、抜本的な改革を図っている。
多くの国の公共放送は、受信機の設置にかかわらず、全世帯から少額を徴収したり、国が補助金を出したりする方向で見直しされています。パソコンやスマホで番組を視聴でき、受信料不要テレビまで登場した現在、ネット受信料どころかそもそも受信料制度を維持するのが現実的ではない。実際にいくつかの公共放送でも番組にCMを入れて広告料を稼いでいます」
受信料を徴収するNHKに対する国民の反感は大きく、過去にはNHKだけを受信しないようにする装置「IRANEHK(イラネッチケー)」が大きな話題となった。
「現在のNHKの番組はスポーツやバラエティなどエンタメばかりで“民放化”が進み、すべての番組に公共性があるとは言えません。しかもNetflixが月額1000円程度で見られるのに対し、NHKは倍の月額2220円。視聴者が納得しないのは当然です。
私がかねて提案するようにNHKは教育チャンネル(Eテレ)周波数帯を売却して、災害放送など公共放送と呼べる内容に特化した上で、受信料を半額にするくらいの抜本改革が求められます」(高橋氏)
※週刊ポスト2022年3月11日号