「さあ、ワイルドな大騒ぎを始めよう」
グローバル投資家がもっとも恐れるのは、ロシア発の金融恐慌だろうが、そうなる可能性は低いと考えられる。であれば、NYダウは回復基調に向かうといった見方もできそうだ。しかし、ここで話は少しややこしくなる。
ウクライナ問題とは関係なく、米国株式市場の暴落を予想する人物がいる。米国資産運用会社であるグランサム・マヨ・オッタール(GMO)の共同創業者であるジェレミー・グランサム氏である。彼は1月20日、「LET THE WILD RUPUS BEGIN」と題するレポートを発表、そのレポートが市場関係者の間で大きな注目を集めている。
題名について、なんと訳してよいのか難しいが、直訳すれば「さあ、ワイルドな大騒ぎを始めよう」ということになるのだろうか。
同レポートによると、「現在の米国株式市場はこの100年間で4番目のスーパーバブル期にある。しかし、長かったバブルのヴァンパイアにもようやく死が訪れようとしている」という。ちなみに、前3回は1929年のS&P500・世界恐慌、1989年の日経225・バブル経済、2000年のNASDAQ・ITバブルである。
主にテクニカル分析からこのように予想しているのだが、ファンダメンタルズからみても、1月時点ですでにインフレが加速しており、そこにウクライナ問題で発生するだろうエネルギー、農産物供給量の減少や国際物流の障害といった供給側のボトルネックが加われば、状況はさらに悪化しかねない。スタグフレーション(景気後退の中での物価上昇)のリスクが高まっている。
投資家の中には、ここからの反動に期待して買いエントリーする者もいるかもしれないが、一方で大きな下落リスクが指摘されていることも頭に置いておきたい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。