米国株が大きな変動に見舞われている。NYダウは2月16日から23日まで5営業日続落、24日は一時、約11か月ぶりの安値となる32272.64ドルを付けたがその後は切り返し、終値では前日比プラスを確保。25日は2.51%上昇と今年最大の上げ幅を記録した。しかし、28日は一転、0.48%下落している。
ロシアのウクライナ侵攻により、リスク回避を急ぐ長期投資家や、大きく下げたところを狙う投機筋などが入り乱れ、市場は不安定な値動きを続けている。
この先、短期間で停戦が実現するのか、制裁の効果はどこまであるのか、先読みの難しい局面となっている。
ただ、後者について、制裁の効果に大きな影響を与えるであろう中国の態度については、はっきりしている。
23日の外交部記者会見で華春瑩報道官は、この問題へのアメリカの関与を振り返りながら詳しく説明し、批判している。24日には、「アメリカがある時点からずっと不断に緊張を高め戦争を扇動してきた。(質問したAFP通信社に対して)あなたたちは過去一定期間、アメリカがウクライナにどれだけの武器弾薬を送ったか知っているでしょう」とまで発言している。
28日の記者会見で汪文斌報道官は、「一部の西側諸国がロシアをSWIFT(国際的な金融情報通信ネットワーク)から排除することについてどう考えるか」と聞かれ、次のように答えている。
「制裁といった手段で問題を解決しようとすることについて、賛成できない。さらに国際法によらない一方的な制裁に反対する。とうにこれまでの実践経験が証明しているように、制裁は問題の解決にならないばかりか、新たな問題を引き起こし、経済的には双方が負ける、あるいは多数が負けるといった局面を作り出し、さらには政治的解決のプロセスに影響を与えかねない」
28日の上海総合指数は0.32%高と上昇しているが、中露貿易、人民元国際決済システム(CIPS)関連、デジタル人民元関連などが高騰している。中国がロシアに対してこれまでと変わらない態度で接する以上、それは結果的にロシアを助けることになるだろう。そもそも、欧州が天然ガスの供給の多くをロシアに依存している以上、完全にSWIFTからロシアを排除した場合の影響は少なくない。
最も効果がありそうなのはロシア中央銀行の海外資産を凍結し、為替介入を難しくした上で、市場から徹底したルーブル売りを引き出させる戦略だ。ロシア国内に強烈なインフレを引き起こし、経済、社会を転覆させようといった狙いである。
ただ、このやり方についても、資金量が豊富で国家統制の効く中国の金融界が隠密にルーブルを買い下がり、ギリギリのところで反転上昇させかねない。各国にロシア系機関が浸透している以上、彼らに資金を供給するといった方法も採れる。ルーブル売りも大きなリスクと隣り合わせであり、バイデン政権に同調できる金融機関がどれだけいるのか未知数である。
中国としては、もし、ロシア経済、金融が崩壊すれば、次の標的は中国だといった危機感が強い。欧米が中露の関係を引きはがそうとしても、それは困難であろう。