賃貸契約時、大家によって行われる入居審査。主に家賃の支払い能力をチェックしているとされるが、性格や人柄を審査対象としているケースもあるようだ。そうした大家側の意向に強く左右される審査方法は法的に問題ないのだろうか。弁護士の竹下正己氏が実際の相談に回答する形で解説する。
【相談】
よい物件が見つかり、引っ越しを考えたのですが、オーナーからNOの返事。私は定職に就いていますし、家賃の保証会社の審査も問題ナシ。どうにも納得がいかず、不動産会社を通して拒否の理由を聞くと、「なんとなく」だったそうです。こんな曖昧な理由で入居を拒否するのは、法的に問題ありませんか。
【回答】
なんとなく気に入らないことは、よくあること。売買では気に入らないものを買わないのが普通ですし、強制もされません。
賃貸借も同じです。契約の内容は、当事者が自由に決められます。
契約条件が一方的なら、契約しないという方法での対応も可能で、契約の方法は当事者の自由ですし、契約相手も自由に選べます。
契約自由の原則は、自由経済社会の必須の条件でもあります。民法が「当事者が法令中の公の秩序に関しない規定と異なる意思を表示したときは、その意思に従う」としているのも、その表われ。
とはいえ、自由放任だけでは、強者が有利な契約を事実上強制しがちです。そこで公の秩序に関する法律で、契約自由の原則を修正しています。例えば、民法では雇用主は従業員を解雇できる自由がありますが、『労働契約法』を基に、客観的な合理的理由を欠き、社会通念上相当である、と認められない解雇は無効になります。口頭による契約は有効ですが、下請け取引では、書面が必須です。