電気・水道など、ライフラインの供給契約についても、事業者は正当な理由なく、供給を拒否できません。医師も正当の事由なく、診療の求めを拒否できません。
その点、建物賃貸借契約には、このような制約はないので、大家は自由に契約相手を選べます。断わったからといって、法に触れることはないのです。ただ、賃貸を断わる理由が「なんとなく」だけではなく、人種などの差別的な理由の場合には、問題が生じます。
憲法では、人種・社会的身分等による差別を禁じています。
憲法は直接、私人間の取引に適用されませんが、こうした憲法で禁じた差別的理由で取引を拒否すると、相手の法的利益を侵害する不法行為になり、慰謝料の支払い義務が生じる可能性もあります。
【プロフィール】
竹下正己/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。
※週刊ポスト2022年3月18・25日号