田代尚機のチャイナ・リサーチ

バフェット氏「米石油株買い増し」で懸念される世界経済の大きな不安

バフェット氏の「重要投資先」日本の商社株も軒並み上昇

 バフェット氏の重要投資先15社の中には伊藤忠商事(8001)、三菱商事(8058)、三井物産(8031)が含まれており、昨年末時点では3割前後の含み益が出ていた。足元では商社の資源ビジネスが評価され、各社の株価はさらに上昇している。

 過去を振り返ってみると2020年8月、これら3社株の購入が明らかになり急騰したが、その後は10月から11月上旬にかけて大きな押し目を形成している。バフェット氏の“信奉者”の中にも、バフェット氏を信じ切れずに買いに入らず、みすみすチャンスを逃がした投資家は少なくないはずだ。

 そうした投資家にとって、今回のオキシデンシャル・ペトロリウム、あるいはシェブロンといった石油、天然ガスなどのエネルギー関連株は、厳しい相場環境の中で数少ない有望銘柄に見えるかもしれない。

 しかし、冷静に状況を分析してみると、もし両社の株価がこの先も上昇し続けるということは、エネルギー価格が上昇し続けることを意味し、それは欧米によるロシアへの制裁が長期に続くなどして、石油の供給が不足し続けるといった場合ではなかろうか。

 もし、欧米が強い制裁を科し続け、ロシア経済が崩壊するのであれば、欧米金融機関は巨額の不良債権を抱えることになる。エネルギー、農産品の需給は大きく崩れ、世界中が厳しいスタグフレーション(景気後退の中でも物価上昇)に見舞われる。すなわち世界経済が大きな危機に見舞われるということだ。

 前述の“バフェット氏からの手紙”で注目されたのは、石油株のウェイトを高めたことではなく、キャッシュポジションがさらに高まっていたことだ。

 個人投資家は株式投資を完全に避けることができる。その点で一般には少なくとも運用資産の7~8割以上を株式に投資しておかなければ商売にならない機関投資家とは立場が違う。投資にあたっては万が一に備えて、保守的な資産管理姿勢を維持しておきたいところだ。

 ここ数年、バフェット氏はキャッシュポジションを高め続けている。“バブルのヴァンパイア”を怖がる著名投資家がここにもいることは、頭に置いておきたい。

文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うフリーランスとして活動。ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(https://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も発信中。

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