「安く買えるならそれでもいい」という考えの間違い
輸入食品にまつわる偽装は、必ずしも高く売ることだけが目的とは限らない。「中国産」だと買い手がつかないため、「輸入元」を偽装したというケースもある。
2010年、大手スーパーのイトーヨーカ堂が中国から輸入した「冷凍うなぎのかば焼き」を、別の業者が輸入したように偽装し転売したとして、食品事業部海外担当マネジャーらが逮捕された。この事件は、当時、中国産うなぎから危険物質「マラカイトグリーン」が検出される問題が相次ぎ、消費者の間で中国産うなぎの買い控えが起こっていたことが引き金とされる。
だが、偽装されていない「国産」うなぎでも、安全性は保証できないと郡司さんは話す。
「うなぎの場合、中国から仕入れた稚魚でも、日本で飼育すれば『国産うなぎ』として販売できるのです。問題は、中国で稚魚がどのように育てられているのか農水省も把握できていないこと。中国で生まれたうなぎの稚魚には、『ニトロフラン誘導体』という遺伝毒性が強い化学物質が使われている可能性がある。DNAを傷つけるため、蚕を使った動物実験では、3代目で奇形が発生したという実験結果もある物質です。日本では使用禁止ですが、中国では殺菌剤として稚魚の育成に使用されている恐れがある」
なぜ、中国生まれの稚魚が「国産」となるのか。
食品表示法に基づく国の基準では、輸入した生鮮食品には「原産国名」を、国内産の食品には「都道府県名」などを表示するよう規定している。ところが、2か所以上で飼育や栽培をした場合は、生育期間が長い場所を原産地として表示するという、通称「長いところルール」が適用されるためだ。
それでも、「安く買えるなら、輸入した産地偽装食品でもいい」と考える人がいるかもしれない。その先には、家計へのしっぺ返しが予想される。
「安い食品が入ってきたと飛びついていると、日本で作ったものが淘汰され、食料自給率が下がる一方です。いま、輸入小麦粉の価格が高騰していますが、ほかの食品でも同じようなことが相次いだとき、高い輸入品を買うしか選択肢がなくなる。それを避けるには国内食品を守る必要がある」(垣田さん)