3月は卒業式の季節。甘酸っぱい卒業式の記憶は、厳粛な式典のほか、校庭や教室での思い出作り、記念の行事や風習、服装など多岐にわたる。起源や由来を知らないものも多い。その中でも、誰が始めたのかよくわからないのが、「詰襟学生服(学ラン)の第2ボタンを意中の人からもらう」という風習だ。学生服メーカー『菅公学生服』(岡山県)によると、由来には3つの説があるという。
「1つ目は学ランのボタンには、いちばん上が自分、2番目が最も大切な人、3番目が友人、4番目が家族とそれぞれに意味がつけられており、その人の“最も大切な人になりたい”という気持ちを表しているという説です」(菅公学生服広報の谷岡美樹さん・以下同)
2つ目は、第2ボタンは心臓にいちばん近いところにあるので〈ハートを掴む〉という意味がこのボタンに込められているという説。
「3つ目は、詰襟学生服の始まりは軍服といわれていますが、戦時中、若者は強制的に戦地に行かなければならなかったため、出征が決まった若者が、出征前に二度と会えないかもしれない大切な人に贈ったという説です。実は映画『予科練物語 紺碧の空遠く』(1960年公開)の中で、出征兵士が旅立つ前に第2ボタンをちぎって渡すシーンがあるんです」
卒業式の袴姿は小学生にも拡大中
いまや卒業式での女学生ファッションといえば、袴姿が定番中の定番だが、いつから着用するようになったのか?
「実は明治初めの女学生の袴は男袴でした」と言うのは、晴れ着の『丸昌』 横浜店広報の近藤陽子さんだ。
「当時の社会では袴を女性が着用することはありませんでしたが、着物に帯の服装では帯や裾が乱れやすく、学業に向かないことから、女学生に袴着用を特例的に認めたのが始まりといわれています」(近藤さん・以下同)