学校の部活動における「体罰」。時代とともにその数は減っているだろうが、それでもなお体罰を行う大人はいる。もしも自分の子供が部活動で体罰を受けたらどうすればいいのか──。実際の法律相談に回答する形で、弁護士の竹下正己氏が解説する。
【相談】
高校生の息子は野球部に所属しています。先日、練習中に無駄話をしたという理由で、顧問の先生に頭を殴られ、「部活をやめてしまえ!」などと暴言を吐かれました。息子によると、同級生と言葉を一言二言交わした程度だったそうです。その先生は生徒を怒鳴りつけ、頭を殴ることがたびたびあるようですが、いまのところ大きな問題にはなっていません。しかし、子供がけがをしてからでは遅いと思います。学校に相談して顧問を変えてもらうことはできるのでしょうか。(東京都・48才・パート)
【回答】
高等学校の部活動は、学習指導要領で「スポーツや文化、科学等に親しませ、学習意欲の向上や責任感、連帯感の涵養等、学校教育が目指す資質・能力の育成に資するものであり、学校教育の一環として、教育課程との関連が図られるよう留意すること」とされています。
部活動は教育の一環です。指導と称して殴る、蹴るといった暴力行為はもちろん、体罰が禁止されるのは当然です。ところが、過去、往々にして運動部の指導にいきすぎがあったため、文部科学省は運動部指導のガイドラインを定めるに至りました。
そこでは「厳しい指導」と過度に精神的・肉体的負荷をかける「許されない指導」との区別を指導者に要求し、禁止行為を例示しています。パワハラと判断される言葉や態度による脅し、威圧・威嚇的発言や行為もそこに含まれます。頭を殴り、暴言を吐いたその顧問は間違いなくやりすぎです。