しかし、こうした良好な需給環境も、29日の権利付き最終日を境に一巡してくる。また、米株市場に特に当てはまるが、急速なリバウンド局面においての出来高は少なく、上昇の主体はほとんど短期筋によるものと思われる。そのため、月替わり前後のタイミングからは再び調整リスクが高まると考えられ、ウクライナ情勢などの動向には注意が必要だろう。
週末には米3月雇用統計を控えており、結果を見極めたいとの思惑から、一段の上値追いを躊躇させるだろう。3月のFOMC後、多くのFRB高官から、複数会合での0.5ptの大幅利上げも辞さない姿勢が相次いで示されている。同時に、次回5月会合でのバランスシート縮小(QT)開始の公算も高くなってきており、その縮小ペースも前回に比べて「かなり早い」ものが想定されている。
0.5ptの利上げを実施しつつ、同時にQTも進行させるというのは異例の引き締めプロセスだ。大量に溢れた緩和マネーが今まで相場を下支えてきたことを踏まえれば、QTの影響には注意が必要だろう。5月FOMCでの利上げ幅やQTのペースを巡るヒントを得ようと、週末の米雇用統計への注目度は高い。米10年物国債利回りは2019年半ば以来の高水準にあり、結果を受けた金利の反応は、グロース(成長)株を中心とした相場動向を占ううえで注目されよう。
相場は大分ウクライナ情勢に関して反応が乏しくなってきたが、依然として油断は禁物だろう。ロシアの生物兵器、化学兵器、核兵器の使用可能性が警告されており、仮に実際に使用されれば、欧米諸国は一段と経済制裁を強化する方針。一方、ロシアのプーチン大統領は欧州諸国に燃料の購入にルーブルでの支払いを要請し、ルーブルでの支払いがなければ、即座に供給を停止するとも警告している。欧州のロシアへの燃料依存度は非常に高く、仮に供給停止となると、足元再び強含みで推移している燃料価格の急騰につながりかねない。この場合、株式市場が再び大きく調整する恐れがあり、留意したい。
そのほか、米国で発表される住宅価格や消費者センチメント、景況関連の指標にも注目だ。足元でスタグフレーション(物価高と景気後退の併存)リスクが懸念されるなか、直近、欧米諸国で発表されている経済指標では一部で既にそうした兆候が見られ始めている。こうした懸念を一段と裏付けるような内容となれば、景気敏感株を中心に下押し圧力となるため、内容を見極めたい。
今週は28日に米2年国債入札、米5年国債入札、29日に日銀金融政策決定会合の主な意見(3月開催分)、2月失業率・有効求人倍率、米1月S&Pコアロジック・ケース・シラー住宅価格指数、米3月消費者信頼感指数、米7年国債入札、30日に2月商業動態統計、米3月ADP全米雇用リポート、米10-12月期GDP確報値、31日に2月鉱工業生産、2月住宅着工統計、中国3月製造業/非製造業PMI、米2月個人消費所得・個人支出、4月1日に3月日銀短観、3月新車販売台数、中国3月財新製造業PMI、米3月ISM製造業景気指数、米3月雇用統計などが発表予定。